AIメモリー株と呼ばれるMicron・SanDisk・SK Hynixなどの半導体株が、直近1週間で最大30%を超える急落に見舞われている。一方で暗号資産のAI銘柄はNEAR+5.8%・FET+4.7%・TAO+2.7%と底堅く推移し、同じ「AI」を冠しながら株式市場と暗号資産市場の反応がはっきりと分かれた。イラン軍のミサイルを米軍が迎撃するという地政学リスクが重なり原油WTIは4.4%高の82.73ドルまで急伸したが、ビットコインは動じず6万4,000ドル前後を維持している。市場の焦点は7月29日午後2時(米東部時間)に迫ったFOMCの金利決定に移りつつある。
いま相場で何が起きているか
2026年7月29日朝(米東部時間)時点で、ビットコインは24hで+0.27%の6万3,933ドル、その後の値動きでは6万4,363ドル前後まで値を戻し、節目の6万4,000ドルを回復した。イーサリアムは1,921.98ドルで24h+1.56%高。仮想通貨全体の恐怖強欲指数は29と「恐怖」圏に据え置かれたままだが、価格自体は底堅さを見せている。
暗号資産のAIセクターは合計時価総額約211億ドルで24hはほぼ横ばい(-0.0%)。その内訳を見ると、NEAR Protocolが1.58ドルで+5.8%、Artificial Superintelligence Alliance(旧FETCH.AI)が0.1341ドルで+4.7%、Bittensor(TAO)が192.66ドルで+2.7%、Chainlink(LINK)が8.39ドルで+1.1%、Render(RENDER)が1.39ドルで+1.5%と、上位銘柄は軒並みプラス圏で推移している。
対照的に、半導体のAIメモリー株は総崩れの様相だ。SanDiskは直近で12%安の1,270ドル、Micron Technologyは5%安の871ドル、Western Digitalは7%安の483ドルまで下落。より長い期間で見ると、SK Hynixは高値から約47%、SanDiskは50%超、Micron・Western Digitalはそれぞれ33%程度下げているとの報道もある。
何がこの動きを作ったか
AIメモリー株急落の主因は2つある。1つは、中国のDRAMメーカーCXMT(長鑫存儲技術)が世界シェア8%を握る第4位のDRAMメーカーに成長し、AppleがCXMT製DRAMの採用テストを行っていると報じられたこと。中国製メモリーが将来的にトップ顧客層にまで浸透するとの懸念が、需給ひっ迫を前提にしたAIメモリー株の高評価を揺るがした。もう1つは単純な利益確定で、Microntは年初来+227%、SanDiskは+526%、Western Digitalは+209%というAIメモリー需要を織り込んだ急騰の反動が出ている。SK Hynixの決算も、6四半期連続で市場予想を上回りながら、経営陣が示すAIメモリー需要の先行きガイダンスへの警戒感から株価は上がらなかった。
これとは別に、7月28日夜(米東部時間)にはイラン革命防衛隊が米軍拠点への攻撃を試み、米中央軍がこれを迎撃したと発表。原油WTIは4.4%高の82.73ドルまで急伸し、リスクオフ心理が一時的に強まった。ただしビットコイン・イーサリアムはこの地政学リスクをおおむね吸収し、大きな崩れは見られていない。
資金はどこへ動いているか
ビットコイン現物ETFは7月28日、4営業日連続の日次純流出(4,975万ドル)を記録した。ただし週間ベースでは3週連続の純流入を維持しており、単純な「資金逃避」とは言い切れない。同時期にモルガン・スタンレーがイーサリアムとソラナの新規ETP(経費率0.14%)をNYSE Arcaに上場しており、機関投資家の資金がビットコインから他の暗号資産へ再配分されている可能性がある。
暗号資産AIセクター自体への資金流入拡大は今のところ確認できず、時価総額はほぼ横ばいの211億ドルにとどまる。NEARやFETの上昇は銘柄固有の物色によるところが大きく、セクター全体を押し上げる規模の資金流入には至っていない。ビットコイン建玉(オープンインタレスト)も直近のピーク圏からは縮小しており、FOMCを前にレバレッジを積み増す動きは限定的だ。
過去の類似局面との比較
7月後半だけでも、AI関連の株式(Nvidiaなど大手テック株)が急落する一方で暗号資産のAI銘柄が逆行高になる場面は複数回観測されている。ただし今回は「AI半導体」というより「AIメモリー」という、より川上のサプライチェーン材料への急落である点が異なる。過去の類似局面では、株式のAI関連銘柄の急落から数日〜1週間程度でAI銘柄の逆行高が一服し、株式市場の地合いに追随して調整するケースが多かった。今回も同じパターンをたどるか、FOMC後の金利見通し次第で分岐するとみられる。
また、SK Hynixの決算そのものは6四半期連続で市場予想を上回っており、需要そのものが消失したわけではない点も過去局面との共通点だ。過去の急落局面でも、決算内容自体は良好ながら「先行きガイダンスへの警戒」だけで株価が売られるケースが繰り返されており、今回もその再現とみる向きが多い。ファンダメンタルズの毀損というより、年初来で数百%規模まで買われた銘柄群のポジション調整という性格が強い。
注目銘柄と価格水準
Bittensor(TAO、192.66ドル)は節目とされる214〜215ドルのレジスタンスを上抜けられるかが焦点。複数の分析ではこの水準を突破しない限り上値の重さが続くと指摘されている。NEAR Protocol(1.58ドル)は週間+5.8%と資金流入の観測があり、直近高値圏への接近が意識される。Artificial Superintelligence Alliance(FET、0.1341ドル)も週間で4%超上昇しているが、AIセクター全体が横ばいであることを踏まえると、個別材料による物色である点には注意したい。
国内取引所での取扱いは銘柄・取引所ごとに差があるため、購入を検討する場合は各社の取扱一覧を事前に確認する必要がある。
想定されるシナリオとリスク
上振れシナリオ: FOMCが金利据え置きとハト派的な文言を組み合わせれば、ビットコインは6万4,000ドル台を足場にさらなる戻りを試す展開が想定される。この場合、暗号資産AI銘柄も株式のAI関連株安から切り離された強含みを続ける可能性がある。
下振れシナリオ: FOMCがタカ派的なサプライズを見せる、あるいはイランを巡る地政学リスクがエスカレートし原油高が長期化すれば、ここまでの底堅さが一気に反転するリスクがある。AIメモリー株の急落が半導体セクター全体、ひいてはハイテク株全般への調整に波及した場合、暗号資産のAI銘柄も無傷ではいられないだろう。
まとめ
1つ目は、AIメモリー株の急落と暗号資産AI銘柄の底堅さという、同じ「AI」ブームの中でも評価軸が異なる資産クラスの温度差がはっきり出たこと。2つ目は、イラン軍事行動という地政学リスクをビットコインが吸収し、6万4,000ドル前後の底堅さを見せたこと。3つ目は、FOMCの金利決定という当面最大のイベントが目前に迫っており、据え置き・ハト派か、タカ派サプライズかで両セクターの反応が変わりうることだ。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。
