オプティミズム(OP)とは、イーサリアムの処理能力と手数料を改善するレイヤー2(L2)ネットワーク「OP Mainnet」と、その開発基盤である OP Stack・チェーン連合 Superchain を統治するガバナンストークンである。本記事では2026年7月時点で確認できる公開データをもとに、OPの技術・トークノミクス・エコシステムの現在地と、「オワコン」と評される背景、そして今後の見通しを中立的に整理する。

なお本記事に登場する価格・時価総額・TVL(預かり資産総額)などの数値は、すべて2026年7月時点で各データソースが公表していた値であり、暗号資産の価格は常に変動する。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではない。

オプティミズム(OP)とは

プロジェクトの成り立ち

Optimismは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するために開発された「Optimistic Rollup」方式のレイヤー2ソリューションである。イーサリアム本体(レイヤー1)はセキュリティと分散性に優れる一方、取引が混雑すると手数料(ガス代)が高騰し、処理速度も低下する。Optimismは取引の実行をイーサリアムの外側で行い、その結果をまとめてイーサリアムに書き戻すことで、セキュリティをイーサリアムに依存したまま手数料を大幅に下げる設計を採る。

OPトークンは2022年5月にエアドロップ形式で配布が開始された。特徴的なのは、OPが「ガス代を支払うためのトークン」ではないという点である。OP Mainnet上の取引手数料はETHで支払われ、OPはあくまで「Optimism Collective」と呼ばれる自律的な組織のガバナンス(意思決定)と、エコシステムへのインセンティブ配分に用いられる。この設計思想は、後述するRetroactive Public Goods Funding(RetroPGF、レトロアクティブ公共財資金提供)という独自の資金分配モデルと不可分である。

2026年7月時点の基本情報

項目 内容(2026年7月時点)
名称 Optimism(オプティミズム)
ティッカー OP
種別 イーサリアム レイヤー2(Optimistic Rollup)/ガバナンストークン
価格 約0.094ドル(約0.09〜0.10ドル台で推移)
時価総額 約2億1,500万ドル(時価総額ランキング約152位)
循環供給量 約22億8,200万OP
総供給量・最大供給量 4,294,967,296 OP(約42億9,500万OP)
完全希薄化後時価総額(FDV) 約4億400万ドル
過去最高値(ATH) 4.84ドル(2024年3月6日)
過去最安値(ATL) 0.08877ドル(2026年6月10日)
ATHからの下落率 約98%
インフレ率 年約2%
国内取扱 bitbank、OKJ、Binance Japan で取扱あり

ここで最も目を引くのは、過去最高値からの下落率が約98%に達している点と、過去最安値を2026年6月10日という直近に記録している点である。つまりOPは、2026年前半において歴史的な安値圏で推移している銘柄だといえる。この事実を無視して「将来性」だけを論じることはできないため、本記事では後段で「なぜここまで下落したのか」をデータで分解する。

OPトークンの役割

OPトークンが担う機能は主に3つある。

第一に、ガバナンス機能である。OP保有者は「Token House」と呼ばれる議会に参加し、プロトコルのアップグレード、トレジャリー(国庫)の使途、インセンティブ配分などの提案に投票できる。

第二に、エコシステムへのインセンティブ配分である。Optimism Collectiveは、エコシステムに貢献したプロジェクトや開発者に対してOPを配分する。この配分は事前の申請ではなく「すでに生み出された成果」に対して事後的に行われる点が特徴で、これがRetroPGFである。

第三に、2026年2月から始まった買い戻し(バイバック)プログラムの対象資産としての役割である。詳細は後述するが、Superchainが生み出すシーケンサー収益の一部がOPの買い戻しに充てられることが、2026年1月のガバナンス投票で決定した。これはOPに「収益とのひも付け」を与える初めての本格的な試みである。

Optimismの技術:Optimistic Rollup・OP Stack・Superchain

Optimismの技術スタックは、単一のチェーンではなく「チェーンを量産するための共通基盤」へと発展してきた。ここを理解しないとOPの将来性は評価できないため、3つのレイヤーに分けて整理する。

Optimistic Rollupの仕組み

Optimistic Rollupは、「提出された取引はすべて正しいものと楽観的(optimistic)に仮定する」ことから名付けられた方式である。L2側で取引をまとめて実行し、その結果(ステートルート)をイーサリアムに提出する。提出された結果に誤りがあると考える第三者は、一定期間内に「不正証明(Fault Proof/Fraud Proof)」を提出することで異議を申し立てられる。この異議申し立て期間は約7日間である。

この設計の利点は、EVM(イーサリアム仮想マシン)との互換性がきわめて高いことである。イーサリアム向けに書かれたスマートコントラクトをほぼそのまま動かせるため、開発者の移行コストが低い。一方の欠点は、L2からL1へ資産を引き出す際に約7日の待機期間が発生することである。ZK(ゼロ知識証明)ロールアップが証明提出後1時間以内に出金を確定できるのと比べると、ユーザー体験上の明確な劣位となる。

なお実務上は、この7日待機を回避するためのサードパーティ製ブリッジが広く使われており、体感的な不便さは軽減されている。ただしそうしたブリッジは独自の信頼前提とリスクを持つ点には注意が必要である。

不正証明「Cannon」とStage 1

L2の分散性を評価する際、「本当に誰でも不正を指摘できるのか」は決定的に重要である。仕組み上はロールアップでも、不正証明が稼働していなければ、運営者が誤った状態を提出しても誰も止められない。

Optimismは2024年6月10日、OP Mainnetで不正証明システム「Cannon」を稼働させた。Cannonはパーミッションレス(許可不要)で状態ルートに異議を申し立てられる仕組みであり、これによりOP MainnetはL2の分散度評価で「Stage 1」に分類される段階に到達している。2026年時点でもOP MainnetはStage 1で稼働している。

ただし課題も残る。2026年4月時点では不正証明はチェーンごとに独立して動作しており、たとえばBase上で成立した不正証明がOP Mainnetの状態に自動的に反映されるわけではない。Superchain全体を1つのセキュリティ領域として統合する作業は、2026年時点でなお進行中である。

OP StackとSuperchain

OP Stackは、Optimismのコア技術をオープンソースのモジュール群として切り出したものである。これを使えば、誰でも自分のL2チェーンを比較的容易に立ち上げられる。

このOP Stackで構築されたチェーン群の連合体がSuperchainである。2026年時点でSuperchainには50を超えるチェーンが参加しており、Base、Unichain、World Chain、Zora、Mode、Ink、Soneium、Celo、そしてOP Mainnet自身などが名を連ねる。2026年4月時点で、Superchain全体のTVLは約60億ドル規模とされる。

Superchainの経済モデルを規定するのが、2023年7月に導入された「Law of Chains(チェーンの掟)」である。OP Stackを採用するチェーンは、シーケンサー収益の2.5%、または純シーケンサー利益(手数料収入からL1ガス代を差し引いたもの)の15%の、いずれか高い方をOptimism Collectiveに拠出する。OP Mainnet自身は例外で、純シーケンサー収益の100%を拠出する。

この「ロイヤリティ」構造こそがOPの価値提案の中核である。Optimismは自分のチェーンだけで稼ぐのではなく、OP Stackを採用したチェーン群の成長から継続的に収益を得る。ソフトウェアのライセンス収入に近いモデルだといえる。実際、Optimism Collectiveのトレジャリーは2026年第1四半期に、これらのチェーンから約1,400万ドルの純シーケンサー収益を得たとされる。

ただし後述するとおり、この仕組みはスマートコントラクトによって強制されているわけではなく、ガバナンス上の合意とインセンティブの整合性に依存している。この「強制力の不在」が2026年に大きな試練を迎えることになる。

Superchain Interopと共有シーケンサー

Superchainの構想を完成させる鍵が、チェーン間の相互運用性(Interop)である。現状、50超のチェーンが同じ技術基盤を使っていても、それぞれは独立したチェーンであり、資産や状態の移動にはブリッジが必要になる。

Optimismが進めるSuperchain Interopは、ERC-7802規格とSuperchainERC20トークン標準を用いて、信頼できる仲介者を新たに導入することなくチェーン間でネイティブなメッセージパッシングを実現しようとするものである。2026年4月時点でネイティブInteropはdevnet(開発ネット)で稼働しており、メインネット展開はPectraと整合したアップグレードの時期が目標とされている。

さらに、Superchain全体で単一のシーケンサーを共有する「共有シーケンサー」構想も進む。この役割はEspresso Systemsが担う見込みで、同社はHotShotというBFT(ビザンチン障害耐性)コンセンサスプロトコルを用い、複数のSuperchainメンバー間で取引をアトミックに(不可分に)順序付けする。共有シーケンサーが本番稼働すれば、チェーン群は単一の手数料プールを共有し、チェーンをまたぐ取引を一括で解決できるようになる。本番展開はネイティブInteropと並行して2026年中が目標とされている。

OPのトークノミクスと供給・アンロックスケジュール

初期配分

OPの初期総供給量は4,294,967,296 OP(2の32乗)である。配分は以下のとおりで、公共財と利用者への配分が重い設計になっている。

配分先 比率 内容
エコシステム基金 25% ガバナンス基金5.4%/パートナー基金5.4%/シード基金5.4%/未割当8.8%
RetroPGF(公共財資金) 20% 事後的な貢献評価に基づく配分
ユーザーエアドロップ 19% 複数回に分けて実施。第5回終了後も約14%が将来分として残存
コアコントリビューター 19% 開発チームへの配分(べスティングあり)
投資家 17% 初期出資者への配分(べスティングあり)

加えて、総供給量には年約2%のインフレが設定されている。つまりOPは供給量が固定された銘柄ではなく、緩やかに希薄化が続く設計である。

アンロックによる売り圧

2026年7月時点で循環供給量は約22億8,200万OPであり、総供給量約42億9,500万OPの半分強にとどまる。裏を返せば、まだ全体の約47%が未流通であり、今後も継続的に市場へ供給される。

直近のアンロック規模を具体的に見ると、2026年4月30日には約3,134万OPが解放され、これは当時の循環供給量の約1.5〜1.6%に相当した。2026年5月31日にも3,100万OPを超える解放が実施されている。次回のアンロックは2026年7月11日に設定されていた。

このように、OPのアンロックは「年に一度の巨大なクリフ」ではなく、毎月継続する分割型である。市場への影響という点では両面がある。予測可能で規模も一定であるため、価格に事前に織り込まれやすいという見方がある一方、循環供給が毎月1.5%前後ずつ増え続けるということは、価格が横ばいであるためには毎月それに見合う新規需要が必要であることを意味する。時価総額が約2億ドル台まで縮小した現在、この構造的な希薄化圧力は無視できない大きさになっている。

バイバックプログラム(2026年2月開始)

こうした希薄化圧力への対抗策として登場したのが、OPの買い戻しプログラムである。

Optimism Foundationは、Superchainの純シーケンサー収益の50%をOPの継続的な買い戻しに充てる案を提示した。ガバナンス投票は2026年1月22日に開始され、同年1月28日に賛成84.4%で可決された。定足数も十分に上回っての可決である。プログラムは2026年2月から12ヶ月間のパイロットとして開始された。残る50%は従来どおりエコシステム支援、助成金、運営費に充てられる。

Optimism Foundationによれば、Superchainのシーケンサーは過去1年間で約5,900 ETHの収益を生み出した。この規模がバイバックの原資となる。

ただし重要な留保がある。買い戻されたOPはOptimism Collectiveのトレジャリーで保有されるにとどまり、バーン(焼却)や流通からの恒久的な除去は義務付けられていない。将来的にステーキング機構やインセンティブ、あるいはバーンに使われる可能性は残されているが、それは今後のガバナンス判断に委ねられている。したがって、このプログラムを「供給の恒久的な減少」と同一視することはできない。

デリゲート(議決権委任先)の中には反対意見もあった。「Optimismは助成金や現物支払いを通じてOPのネットセラー(純売り手)であり、なおネット売却を続けている状態で、貴重なハードアセットを費やしてOPを買い戻し、運営資金の持続期間を縮めるのは合理的でない」という趣旨の批判が記録されている。この論点は、バイバックの実効性を評価するうえで押さえておく価値がある。

Optimismのユースケースとエコシステムの現在地

手数料の実測値

L2の存在意義は手数料削減にある。2026年5月7日時点の実測では、OP MainnetのETH送金コストは約0.09ドル、トークンスワップは約0.18ドルであった。同時点のイーサリアムメインネットはそれぞれ約1.10ドル、約5.48ドルである。スワップで比較すると約30分の1であり、L2としての基本的な価値提供は機能しているといえる。

主要なユースケース

OP Mainnetおよびその周辺のSuperchainチェーン上では、以下のような用途が実際に稼働している。

  • DeFi(分散型金融): レンディング、DEX(分散型取引所)、デリバティブなど。イーサリアム上の主要プロトコルの多くがOP Mainnetに展開している
  • NFT・クリエイター経済: Zoraに代表される、クリエイター向けに特化したOP Stackチェーンが存在する
  • 消費者向けアプリ: Coinbaseが手掛けるBase、Worldcoinプロジェクトが手掛けるWorld Chainなど、一般ユーザーの大量流入を前提としたチェーンがOP Stackを採用してきた
  • 企業・大手プレイヤーの参入: SonyがSoneiumを、Uniswap LabsがUnichainをOP Stackで構築するなど、既存の大手がL2を持つ際の選択肢として採用されてきた

エコシステムの成長実績

Messariの2025年下半期レポートによれば、Superchain全体の取引件数は2025年上半期の24.7億件から下半期には36.0億件へと増加した。半期比で約46%の増加であり、少なくとも2025年時点ではSuperchain構想は利用実績の面で前進していた。

Optimism Collectiveのガバナンスと RetroPGF

Optimismのガバナンスは二院制(bicameral)を採る。OP保有者によるトークン加重投票の「Token House」と、公共財資金の配分を担う「Citizens' House」の2つである。この二院制は、トークン保有量が多い者だけが意思決定を独占しないようにするための設計であり、暗号資産のガバナンス実験としては比較的野心的な部類に入る。

RetroPGFは、この二院制を実際に動かす仕組みである。事前に「これをやるので資金をください」と申請するのではなく、すでに測定可能な成果を出した貢献者に対して、事後的にOPを配分する。配分の判断は「バッジホルダー」と呼ばれるガバナンスによって選出された評価者が行い、提案内容ではなく成果を優先する評価プロセスが採られている。

RetroPGFはこれまでに4ラウンドが完了し、累計で6,000万OPを超えるトークンが数百のプロジェクトと貢献者に配分された。金額ベースでは累計1億ドルを超えるとされ、さらに将来ラウンド向けに巨額の枠が確保されている。対象はオープンソースのインフラ、ガバナンス研究、開発者教育、長期的なエコシステム保守など多岐にわたる。

このモデルの評価は分かれる。エコシステムの「公共財」を持続的に支える仕組みとして高く評価する見方がある一方、配分されたOPは最終的に市場で売却されうるため、継続的な売り圧の供給源になっているという指摘もある。前述のデリゲートによる「Optimismはネットセラーである」という批判は、まさにこの構造を指している。

「OPは上がらない・オワコン」と言われる理由をデータで検証する

OPを検索すると「上がらない」「オワコン」といった関連語が頻出する。ここでは感情論を排し、確認できるデータに基づいて背景を4点に分解する。

理由1:過去最高値から約98%の下落

最も直接的な理由は価格実績である。OPの過去最高値は2024年3月6日の4.84ドルであった。2026年7月時点の価格は約0.094ドルであり、下落率は約98%に達する。さらに、過去最安値0.08877ドルを2026年6月10日に記録しており、これは記事執筆時点からわずか1ヶ月ほど前の出来事である。

2024年3月の高値圏で購入した投資家は評価額が50分の1近くまで縮小した計算になる。時価総額ランキングも約152位まで後退しており、かつてL2セクターの代表銘柄として扱われていた頃の位置づけとは大きく異なる。「オワコン」という評価が出てくること自体は、価格実績だけを見れば説明がつく。

理由2:Baseの OP Stack 離脱(2026年2月18日)

2026年におけるOPにとって最大のネガティブサプライズは、Baseの離脱である。

Coinbaseが運営するBaseは、2026年2月18日、Optimismの OP Stack から自社独自の統合ソフトウェアスタックへ移行する計画を発表した。Baseは Superchain の旗艦チェーンであり、Optimism Collectiveへの共有収益のうち約97%を生み出していたと報じられている。取引件数ではOP Mainnetの約4倍、ガス手数料では約80倍を生成していたとするデータもある。

金額で見ると、Baseは2026年第1四半期にCollectiveへ約140万ドルを拠出しており、年換算では約450万ドル規模の貢献とされていた。この収益はRetroPGFを通じて配分されていた。

発表後24時間でOPは約26%下落した。市場が織り込んだのは単なる収益減ではなく、Superchainモデルそのものへの疑義である。あるアナリストの指摘が問題の本質を突いている。「旗艦チェーンであるBaseが自前のスタックを作るために離脱するなら、なぜ他のチェーンが残って収益を分け続ける必要があるのか」。

前述のとおり、Law of Chains による収益分配はスマートコントラクトで強制されているわけではなく、ガバナンス上のインセンティブ整合に依存している。最大の拠出者が離脱を選択したという事実は、この枠組みの強制力の弱さを実証してしまった形になる。これがOPの評価を構造的に押し下げている最大の要因である。

理由3:レイヤー2セクターの競争激化とコモディティ化

2026年5月時点で、73の稼働中ロールアップが合計480億ドルを超えるTVLを担保している。L2は「希少な技術」ではなくなり、供給過剰の状態に近づいている。

しかもシェアは上位に極端に偏っている。Arbitrum Oneが約169億ドルでL2市場の40〜44%を占め、Baseが約128億ドルで続く。この2チェーンだけでL2のDeFi流動性の約77%を占める。一方、OP Mainnet自体のTVLは約19.1億ドルであり、Arbitrumの約9分の1にとどまる。

つまりOPは、「自社チェーンのシェアではArbitrumやBaseに劣後し、OP Stackというインフラ提供でそれを補う」という二段構えの戦略を採っていた。そのインフラ側の柱がBase離脱で揺らいだのが2026年の状況である。

さらに、OP Stackの主要機能はオープンソースであるため、技術的な参入障壁自体は高くない。競合するロールアップフレームワーク(Arbitrum Orbit、Polygon CDK、ZK系スタックなど)も存在し、チェーン構築フレームワークはコモディティ化が進んでいる。

理由4:継続的なアンロックとインフレ

前述のとおり、循環供給量は総供給量の半分強にとどまり、毎月1.5%前後の規模でアンロックが継続する。加えて年約2%のインフレが設定されている。

時価総額が約2億ドル台まで縮小した状態では、月あたり数千万ドル規模の新規供給が市場に出続けることは相対的に重い負担となる。バイバックプログラムはこの対抗策として導入されたが、原資となるSuperchainのシーケンサー収益は年間約5,900 ETH規模であり、その50%がバイバックに向かう計算になる。Baseの離脱により、この原資そのものが縮小する可能性がある点も併せて考慮する必要がある。

検証の結論:ネガティブ材料は実在するが、事業は稼働している

以上4点は、いずれも「感情的な悲観」ではなく実データに基づくネガティブ材料である。「オワコン」という表現が出てくる背景には相応の根拠がある、というのが公平な評価だろう。

一方で、以下も同時に事実である。OP MainnetはStage 1の不正証明を伴って稼働し続けており、手数料はイーサリアム本体の30分の1程度に抑えられている。Superchainの取引件数は2025年に半期で約46%増加した。Superchain全体のTVLは約60億ドル規模を維持している。50を超えるチェーンがOP Stackを採用しており、Baseが離脱してもUnichain、World Chain、Soneium、Ink、Celoなどは残る。そして2026年2月からは収益とOPをひも付けるバイバックが実際に稼働している。

つまり現状は「プロダクトは動いているが、トークンへの価値還流の道筋が投資家に十分信頼されていない」状態と要約できる。この乖離が今後どちらに収束するかが、OPの将来性を評価する際の中心的な論点である。

Optimismの今後の見通しとロードマップ

2026年の技術マイルストーン

2026年にOptimismが達成を目指す技術要素は明確である。

  1. ネイティブInteropのメインネット展開: 2026年4月時点でdevnet稼働。Pectraと整合したアップグレードの時期にメインネット投入が目標とされる
  2. 共有シーケンサーの本番稼働: Espresso SystemsのHotShotを用いた、Superchain横断のアトミックな取引順序付け。ネイティブInteropと並行して2026年中が目標
  3. チェーン横断の不正証明統合: 2026年4月時点ではチェーンごとに独立している不正証明を、Superchain全体で統合する作業

これらが揃うと、Superchainは「同じ技術を使う独立チェーンの集まり」から「単一の統合された経済圏」に近づく。ユーザー体験としては、複数のSuperchainチェーンをまたぐ操作が、単一チェーン内の操作と同じ感覚で完結することを目指している。

経済モデルの見通し

技術以上に注目されるのは経済面である。論点は2つに集約される。

第一に、Base離脱後の収益基盤をどう再構築するかである。Baseが共有収益の約97%を占めていた以上、残るチェーン群の成長だけで穴を埋めるのは容易ではない。Unichain、World Chain、Soneiumなどの成長速度と、新規チェーンの獲得ペースが実質的な指標となる。

第二に、バイバックプログラムの実効性である。12ヶ月のパイロット期間は2027年2月頃に一巡する。その時点での評価次第では、買い戻したOPのバーンやステーキング機構への転用といった追加のガバナンス判断が行われる可能性がある。逆に、原資が想定を下回れば継続自体が議論の対象になりうる。

注視すべき指標

投資判断の材料としてではなく、プロジェクトの進捗を追う目安として、以下の指標が参考になる。

  • Superchain全体のTVLと取引件数の推移
  • OP Mainnet単体のTVLとL2市場シェア
  • Optimism Collectiveが四半期ごとに受け取るシーケンサー収益額
  • 新規にOP Stackを採用するチェーンの数と、既存チェーンの離脱の有無
  • バイバックの実行額と、買い戻されたOPの取り扱いに関するガバナンス決定
  • 毎月のアンロック規模と循環供給量の増加率

OPの価格予想:第三者予測とレンジ

暗号資産の価格を正確に予測する手法は存在しない。ここでは第三者の予測を「そういう見方が公開されている」という事実として紹介するにとどめ、断定的な価格見通しは示さない。以下の数値はいずれも各予測サイトが2026年7月時点で公表していたものであり、実際の価格を保証するものではない。

第三者予測の例

予測元 対象期間 最低 平均 最高
Changelly 2026年 0.0953ドル 0.106ドル 0.117ドル
Changelly 2027年 0.0701ドル 0.0776ドル 0.0887ドル
Changelly 2028年 0.0366ドル 0.0481ドル 0.0717ドル
Changelly 2030年 0.0220ドル 0.0269ドル 0.0344ドル
Hexn 2026年7〜8月 0.0943ドル 約0.104ドル 0.1101ドル

予測をどう読むか

注目すべきは、これらの予測が総じて弱気であることだ。Changellyの予測では2027年以降の平均値が2026年を下回り、2030年には0.03ドル前後まで低下する想定になっている。同サイトは市場センチメントを「弱気」とし、Fear & Greed Index(恐怖と強欲指数)が25という数値を挙げていた。

ただし、この種の予測は多くの場合、過去の価格トレンドを機械的に外挿するアルゴリズムに基づいており、Base離脱の影響がどこまで織り込まれているか、逆にバイバックやInteropの効果がどこまで反映されているかは不透明である。予測サイトの数値は「現在の市場センチメントの温度計」として読む程度が適切だろう。

前提条件の整理

仮にシナリオとして整理するなら、価格の方向性を左右する変数は次のとおりである。強気側の前提としては、ネイティブInteropと共有シーケンサーの本番稼働が計画どおり進むこと、Base離脱による収益減をUnichainやWorld Chainなど残存チェーンの成長が補うこと、バイバックが継続され買い戻したOPの扱いに関して供給削減方向のガバナンス決定がなされること、そして暗号資産市場全体が上昇局面に入ることが挙げられる。

弱気側の前提としては、Baseに続く離脱チェーンが出てSuperchainの収益モデルが空洞化すること、ArbitrumやBase、ZK系ロールアップとの競争でOP MainnetのTVLシェアがさらに低下すること、毎月のアンロックとインフレによる希薄化がバイバック規模を上回り続けること、L2セクター全体がコモディティ化して収益性が低下することなどが挙げられる。

これらのうちどれが実現するかは、現時点では誰にも確定できない。したがって本記事では、特定の価格水準への到達を予想しない。

OPと競合レイヤー2の比較

比較表(2026年時点)

項目 Optimism(OP Mainnet) Arbitrum One Base zkSync Era
方式 Optimistic Rollup Optimistic Rollup Optimistic Rollup ZK Rollup
TVL 約19.1億ドル 約169億ドル 約128億ドル 約4.04億ドル
L2市場シェア 数%台 約40〜44% 約27%前後 約1%前後
L1への出金 約7日の異議申立期間 約7日の異議申立期間 約7日の異議申立期間 証明提出後1時間以内
ガバナンストークン OP ARB なし ZK
技術基盤 OP Stack(自社) Nitro/Orbit(自社) 2026年2月に OP Stack から独立表明 ZK Stack(自社)
特徴 Superchain構想・収益分配・RetroPGF 単一チェーンでのDeFi流動性首位 Coinbase連携による一般ユーザー導線 ZK方式による高速ファイナリティ

なお2026年時点のL2市場全体では、Optimistic RollupがTVLの約80%を占め、ZK Rollup(zkSync Era、Linea、Scroll、Starknetなど)が残り約20%となっている。StarknetのTVLは約6.17億ドル、Lineaは約4.21億ドルである。

対 Arbitrum

Arbitrum Oneは、L2のDeFi流動性において最大の存在である。TVL約169億ドルはOP Mainnetの約9倍にあたり、単一チェーンとしての厚みでは大きな差がついている。技術方式はOptimismと同じOptimistic Rollupであり、出金の待機期間も同様に約7日である。

戦略面での違いが本質的である。Arbitrumも「Orbit」というチェーン構築フレームワークを持つが、Optimismほど「収益を本体に還流させる連合体」という設計を前面に出してはいない。Optimismは自社チェーンの規模で劣る代わりに、OP Stack採用チェーンからのロイヤリティで稼ぐという差別化を選んだ。この戦略が成立するかどうかがBase離脱で問われている、というのが2026年の構図である。

対 Base

Baseは、Coinbaseという世界最大級の暗号資産取引所を後ろ盾に持ち、一般ユーザーの流入導線で圧倒的な優位を築いた。TVL約128億ドル、OP Mainnetの約4倍の取引件数、約80倍のガス手数料生成という数字がそれを示す。

BaseはもともとOP Stackで構築され、Optimism Collectiveへの最大の収益拠出者であった。しかし2026年2月18日、独自スタックへの移行を発表した。皮肉なことに、OptimismにとってBaseは「OP Stackの成功事例」であると同時に「本体を上回る成長で自立していった競合」でもあった。Baseがガバナンストークンを発行していない点も、両者の設計思想の違いを際立たせている。

対 zkSync Era(ZKロールアップ勢)

zkSync EraをはじめとするZKロールアップは、技術的な優位を持つ。ゼロ知識証明によって取引バッチの正当性を暗号学的に証明するため、証明がイーサリアムに提出されれば1時間以内に出金が確定する。Optimistic Rollupの約7日と比べれば明確な改善である。

一方、現時点での採用実績には大きな差がある。zkSync EraのTVLは約4.04億ドルにとどまり、OP Mainnetの約19.1億ドルを下回る。ZK方式はEVM互換性の達成が技術的に難しく、証明生成のコストも高いため、実運用での普及が遅れてきた。ただしZK技術は改善速度が速く、中長期でOptimistic Rollupの優位が持続する保証はない。この技術的な陳腐化リスクは、Optimismにとって競合との比較上の重要な懸念点である。

対 その他のOP Stack採用チェーン

Superchain内部の関係は競合と協調が入り混じる。Unichain(Uniswap Labs)、World Chain(Worldcoin)、Soneium(Sony)、Zora、Ink、Mode、CeloなどはOP Stackを採用しており、これらが成長すればOptimism Collectiveの収益も増える。逆に、これらがBaseと同様に独自スタックへ移行すれば収益基盤はさらに細る。したがってこれらのチェーンは、OPにとって収益源であると同時に離脱リスクの源泉でもある。

OPの買い方:国内取引所での4ステップ

OPは、2026年7月時点で国内の暗号資産交換業者でも取り扱いがある。海外取引所を使わずに日本円から購入できるため、以下では国内取引所を前提とした手順を示す。

国内での取扱状況

取引所 OPの取扱 形式
bitbank あり 取引所形式・販売所形式の双方
OKJ(旧OKCoinJapan) あり 取引所形式・販売所形式の双方
Binance Japan あり 取扱あり
Coincheck・bitFlyer・GMOコイン・BITPOINT・SBI VCトレード 2026年7月時点で確認できず

bitbankは国内でもトップクラスの取扱銘柄数を持つ取引所で、販売所では1円から購入できる。取引所形式(板取引)を使えば、販売所形式よりスプレッド(売値と買値の差)を抑えられる場合が多い。OKJはOKXグループの日本法人で、51種類の暗号資産を取り扱っており、OPもその一つである。

なお取扱銘柄は各社の判断で追加・廃止されうるため、実際に口座を開設する前に各社の公式サイトで最新の取扱状況を確認してほしい。

購入手順

  1. 取引所の口座を開設する: OPを取り扱う国内取引所(bitbankまたはOKJなど)の公式サイトからアカウントを作成する。メールアドレス登録後、氏名・住所・生年月日などの基本情報を入力する
  2. 本人確認(KYC)を完了する: 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を提出する。スマートフォンによるオンライン本人確認を使えば、最短で当日〜翌営業日に審査が完了する場合が多い
  3. 日本円を入金する: 銀行振込またはクイック入金で日本円を入金する。振込手数料や入金方法ごとの条件は取引所ごとに異なるため、事前に確認する
  4. OPを購入する: OP/JPYの取引ペアを選び、注文を出す。板取引が使える場合、成行注文なら即時約定し、指値注文なら指定した価格で待機できる。手数料を抑えたい場合は取引所形式の指値注文が選択肢になる
  5. 保管方法を決める: 取引所に置いたままにするか、自分で管理するウォレットへ移すかを決める。長期保有を想定する場合、ハードウェアウォレットなど自己管理の選択肢もあるが、秘密鍵を紛失すると復元できない点に留意する

購入前のチェックリスト

  • 取引所の最新の取扱銘柄一覧でOPの取扱を確認したか
  • 販売所形式と取引所形式のコスト差(スプレッド・手数料)を比較したか
  • 生活資金と分離した、失っても生活に支障のない資金の範囲内か
  • 毎月継続するアンロックとインフレの存在を理解したか
  • Base離脱がSuperchainの収益モデルに与える影響を理解したか
  • 日本の税制上、暗号資産の売却益が原則として雑所得に区分されることを把握したか

OPに投資する前に押さえるリスクと注意点

  1. 価格変動リスク: OPは過去最高値4.84ドル(2024年3月6日)から約98%下落し、2026年6月10日に過去最安値0.08877ドルを記録した。短期間で価値が大きく変動しうる資産であり、投資元本は保証されない
  2. Superchain収益モデルの不確実性: Law of Chains による収益分配はスマートコントラクトで強制されておらず、ガバナンス上のインセンティブ整合に依存する。共有収益の約97%を占めていたBaseが2026年2月18日に離脱を表明したことで、この枠組みの持続性に疑義が生じている
  3. 希薄化リスク: 循環供給量は総供給量約42億9,500万OPの半分強にとどまり、毎月1.5%前後の規模でアンロックが継続する。加えて年約2%のインフレが設定されている。バイバックプログラムがこれを相殺できる保証はない
  4. バイバックの限界: 買い戻されたOPはトレジャリーで保有されるにとどまり、バーンや流通からの恒久的除去は義務付けられていない。またプログラムは2026年2月開始の12ヶ月パイロットであり、継続は今後のガバナンス判断による
  5. 競争激化リスク: 2026年5月時点で73の稼働中ロールアップが存在し、ArbitrumとBaseの2チェーンだけでL2 DeFi流動性の約77%を占める。OP MainnetのTVLは約19.1億ドルで、シェアは限定的である
  6. 技術的陳腐化リスク: Optimistic Rollupは出金に約7日の異議申立期間を要する。ZKロールアップは1時間以内に出金を確定できるため、ZK技術の成熟が進めばOptimistic方式の相対的優位が失われる可能性がある
  7. シーケンサー中央集権リスク: 2026年時点でシーケンサーは中央集権的に運用されており、取引の順序付けや検閲に関する脆弱性が指摘されている。共有シーケンサー構想は進行中だが本番稼働は未完了である
  8. スマートコントラクト・ブリッジリスク: L2およびブリッジのスマートコントラクトには、脆弱性や不具合による資産喪失のリスクが常に存在する。特に7日待機を回避するサードパーティ製ブリッジは独自の信頼前提を持つ
  9. 規制・税務リスク: 暗号資産に関する規制は各国で変動しうる。日本では暗号資産の売却益は原則として雑所得に区分され、総合課税の対象となる。具体的な税務処理は個別事情によって異なるため、税理士など専門家に相談してほしい

まとめ:オプティミズム(OP)の将来性をどう見るか

本記事で確認した事実を整理する。

Optimismは、Optimistic Rollup方式のイーサリアムL2であり、その本質的な野心は単一チェーンの運営ではなく、OP Stackという共通基盤とSuperchainという連合体を通じて、L2エコシステム全体からロイヤリティ収益を得るという「インフラのプラットフォーム化」にあった。50を超えるチェーンがOP Stackを採用し、2026年4月時点でSuperchain全体のTVLは約60億ドル規模、2025年の取引件数は半期で約46%増加した。技術面ではCannonによる不正証明がStage 1で稼働し、手数料はイーサリアム本体の約30分の1に抑えられている。プロダクトとしては確かに機能している。

一方で、トークンとしてのOPは厳しい状況にある。過去最高値から約98%下落し、2026年6月10日に過去最安値を記録した。最大の要因は2026年2月18日に発表されたBaseのOP Stack離脱であり、共有収益の約97%を占めていた最大の拠出者が抜けたことで、Superchainの収益モデルそのものへの信頼が揺らいだ。加えて、循環供給量は総供給の半分強にとどまり、毎月のアンロックと年約2%のインフレが希薄化圧力を生み続けている。第三者の価格予測も総じて弱気である。

対抗策として2026年1月28日に賛成84.4%で可決されたバイバックプログラムが2026年2月から稼働しており、Superchain純シーケンサー収益の50%がOPの買い戻しに充てられている。ただし買い戻されたOPのバーンは義務化されておらず、原資自体もBase離脱で縮小しうる。

結論として、2026年7月時点のOPは「稼働するプロダクトと、疑問符のついたトークン価値還流モデルの乖離」という状態にある。今後の見通しを左右するのは、ネイティブInteropと共有シーケンサーが2026年中に本番稼働するか、Baseに続く離脱が発生するか、そしてバイバックが希薄化を相殺しうる規模で継続するかの3点である。これらは現時点では未確定であり、楽観・悲観のいずれかに断定できる材料は揃っていない。

暗号資産への投資は、価格変動によって元本を大きく毀損する可能性がある。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではない。実際の投資判断は、最新の情報を各自で確認したうえで、余剰資金の範囲内で自己責任において行ってほしい。

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