Dune Analytics とは何か

Dune Analytics は、Ethereum をはじめとする主要ブロックチェーンの生データを SQL で直接照会できる、オンチェーン分析プラットフォームです。本記事執筆時点では、DEX の出来高、ステーブルコインの残高推移、NFT 取引、特定プロトコルの利用状況など、多種多様なテーマのダッシュボードがコミュニティから公開されており、無料アカウントでも幅広く閲覧できます。

Glassnode のような「指標として加工された統計量」を提供する分析サービスと違い、Dune は「生データに対して自由に SQL を書ける」柔軟さが最大の強みです。たとえば「この特定の DeFi プロトコルで先週稼働したアドレスの数」「特定 NFT コレクションの上位ホルダー」「特定ステーブルコインのチェーン別残高」など、目的に応じたピンポイントの集計を自分で組み立てられます。

アカウント作成と無料/有料プラン

アカウント作成

メールアドレスや GitHub・Google アカウントで登録できます。アカウントなしでもパブリックダッシュボードは閲覧できますが、クエリの保存・Fork・自分のダッシュボード作成にはアカウントが必要です。

プラン構成のイメージ

本記事執筆時点では、無料プラン(個人利用・基本機能)に加え、Plus / Premium といった有料プランが用意されています。違いの主なポイントは、クエリ実行のリソース(処理時間・並列度)、CSV エクスポートの上限、プライベートクエリ・プライベートダッシュボード、API 利用の権限などです。具体的な数値や条件は変動するため、契約前には公式の最新プランページで確認することを推奨します。

画面と基本UIの歩き方

Discover:ダッシュボード探索

Dune の Discover 画面では、人気ダッシュボード・最新ダッシュボード・テーマ別の一覧を確認できます。たとえば「Stablecoins」「DeFi」「NFT」「Layer2」など、関心テーマで絞ると、自分の用途に近いダッシュボードを早く見つけられます。

Dashboard:ダッシュボード閲覧

各ダッシュボードでは、複数のグラフやテーブルが配置されています。クリックして拡大表示したり、フィルター(期間・チェーン・銘柄など)を変更してインタラクティブに操作したりできます。優れたダッシュボードは、定点観測のテンプレートとして十分使えます。

Queries:クエリ画面

クエリ画面では、自分で SQL を書いてオンチェーンデータを照会できます。クエリの結果はテーブルやチャートで可視化でき、複数のクエリを組み合わせて自分のダッシュボードを構築する流れが基本です。

SQL を書く前に:人気ダッシュボードを使う

SQL の経験がなくても、Dune の活用を始められます。以下のような人気テーマのダッシュボードを開いて閲覧するだけでも、相場の温度感を測る材料が得られます。

  • ステーブルコイン総額・チェーン別分布
  • DEX の出来高・上位ペア
  • NFT の取引量・上位コレクション
  • Layer2 のトランザクション数・アクティブユーザー
  • 特定 DeFi プロトコルの TVL(預入総額)と推移

Glassnode のサイクル指標と組み合わせることで、マクロな BTC サイクル × 個別プロトコルの状況、という形で立体的に把握できるようになります。オンチェーン分析全体の歩き方は オンチェーン分析を始めるためのガイド を参考にしてください。

自分で SQL を書くときの基礎

基本構文

標準的な SELECT / FROM / WHERE / GROUP BY / ORDER BY の構文で、ブロックチェーンのトランザクションテーブルや、整形済みのスプリッタテーブルにアクセスできます。Dune では「Spellbook」と呼ばれる、よく使われるロジックを再利用しやすい形に整えたテーブルが提供されており、初心者でも比較的短いクエリで意味のある結果が得られやすい設計になっています。

重要なテーブル例

  • ethereum.transactions: イーサリアムのトランザクション履歴
  • ethereum.logs: スマートコントラクトのイベントログ
  • erc20.transfers: ERC-20 トークンの移転履歴
  • nft.trades: NFT の取引履歴
  • dex.trades: DEX 横断の取引履歴

テーブル名やスキーマは、Dune のドキュメントとデータエクスプローラーで都度確認するのが安全です。本記事執筆時点でも、対応チェーンの追加に伴ってスキーマが更新されることがあるため、書き始める前に確認する習慣をつけておくと迷子になりにくくなります。

Fork で学ぶ

おすすめの学び方は、関心のあるダッシュボードに含まれるクエリを Fork(複製)し、自分のアカウント配下で SELECT 句や WHERE 句を少しずつ変えてみることです。動くクエリを土台にすると、構文だけでなく「どのテーブルをどう繋ぐか」というデータモデルの感覚が早く身につきます。

可視化の選び方

クエリ結果はテーブルだけでなく、折れ線・棒グラフ・円グラフ・スコアカードなど複数の形式で可視化できます。「時系列の推移を見たいなら折れ線」「上位ランキングを見せたいなら棒グラフ」「単一値を強調したいならスコアカード」というように、表現の目的に合わせて使い分けると、ダッシュボードの分かりやすさが一気に上がります。

ダッシュボード作成の流れ

  1. テーマを決める(例: 「特定 DeFi プロトコルの利用状況」)
  2. 必要な指標を箇条書きで列挙する(TVL、利用アドレス数、収益、トークン価格など)
  3. 既存クエリで再利用できるものを Fork する
  4. 不足しているクエリを自分で書き、可視化形式を整える
  5. ダッシュボードに配置し、フィルター(期間・チェーンなど)を整える
  6. 公開設定を決定し、必要ならコメントや解説を追記する

運用していくうちに、自分用と公開用でダッシュボードの構成を分けると管理がしやすくなります。公開ダッシュボードはコミュニティからのフィードバックを受けやすく、SQL の書き方そのものを磨く良い機会にもなります。

Glassnode との使い分け

Glassnode は、サイクル指標として加工された統計量(MVRV、SOPR、Realized Price など)を強みとし、長期サイクルや BTC・ETH の俯瞰に向いています。一方、Dune は生データに対して柔軟に SQL を書けるため、特定プロトコル・特定アドレス・特定 NFT コレクションのような細かい分析に向いています。

実務では「マクロは Glassnode、ミクロは Dune」という役割分担で使い分けると、両者の強みを活かしやすくなります。Glassnode の使い方は Glassnode オンチェーン分析の使い方 を、サイクル全体の見取り図は 暗号資産サイクルの基礎ガイド を併読しておくと、相場の俯瞰と局所分析を行き来する判断軸が立体的になります。

実務で使うときの注意点

クエリの定義を必ず確認する

人気ダッシュボードでも、クエリの定義によっては自分の想像と違う集計をしているケースがあります。重要な数字を意思決定に使う前には、クエリの SQL を開いて WHERE 句や JOIN 条件を確認する習慣をつけておきましょう。

スキーマ変更とクエリのメンテ

対応チェーンの追加・テーブル仕様の更新に伴い、自分のクエリが動かなくなるケースもあります。重要なクエリは時々動作確認し、必要に応じて修正する運用が必要です。

プライバシーと公開設定

クエリやダッシュボードはデフォルトで公開設定になっていることが多く、個人的な集計や検証段階のクエリを誤って公開してしまうケースもあります。プライベート機能の有無や公開範囲を確認し、必要に応じて運用ルールを決めておくと安全です。

投資判断は最終的に自分の責任で

Dune の数字はクエリ依存です。本記事執筆時点でも、最終的な投資判断は、複数の情報源・テクニカル・マクロ環境と組み合わせ、ご自身のリスク許容度と運用方針に整合させた形で行うことが前提となります。

まとめ

Dune Analytics は、ブロックチェーンの生データに直接 SQL でアクセスできる強力なオンチェーン分析プラットフォームです。閲覧用途であれば SQL を書かずとも、人気ダッシュボードから DeFi・NFT・Layer2・ステーブルコインの動向を把握できますし、自分で SQL を書ける段階に進めば、特定プロトコル・特定テーマに即したピンポイント分析が自由に組み立てられるようになります。Glassnode を「サイクル俯瞰」、Dune を「ミクロな生データ分析」として役割分担で使い、テクニカル・マクロ環境と並べて読むことで、本記事執筆時点でも長く役立つ独自の分析体制を整えていくことができるでしょう。