ビットコインが2026年8月28日12時JST時点で8万765ドル(24時間+2.97%)、イーサリアムが2,526ドル(同+3.20%)まで上昇するなか、AI関連の代表株であるNVIDIAも8月26日発表の決算を受けて8月27日に前日比+7.94%の226.31ドルへ急伸し、時価総額を1日で約4,000億ドル積み増した。8月24日にファンドマネージャーが唱えていた「資金はAI株からビットコインへ逆流している」という説は、両者が同時に買われる展開によって早くも説明を要する状況になっている。

いま相場で何が起きているか

BTCは前日終値の78,432.5ドルから2.97%上昇して8万765ドル、ETHは2,526.23ドルで24時間+3.20%・週間では+10.70%の上げ幅となった。BTCドミナンスは57%台後半で、8月28日8時JST時点の57.73%からほぼ横ばいの推移を保っている。AIセクター全体の時価総額は161億3,456万ドル(24時間+0.9%)と、BTC・ETHの上昇ペースに比べると鈍い反応にとどまっている。

そのなかでBittensor(TAO)だけは24時間で+14%前後の急伸を見せ、価格は250ドル台後半に達した。8月27日20時JST時点の週間+22%高からさらに水準を切り上げており、AIセクター内では突出した動きになっている。一方でRender(RENDER)は+2.1%、Internet Computer(ICP)は+1.0%程度と、AIセクターの他銘柄は総じて動意が薄い。

何がこの動きを作ったか

発端は8月24日、Miller Value Partnersの会長兼CIOであるBill Miller IV氏がCNBCの「Closing Bell」に出演し、「資金はAI投資からビットコインへ、投機的にではなく戦略的に移動している」と語ったことだった。同氏は自社ファンドで暗号資産への配分を約10%まで引き上げているとし、根拠として2026年度の米財政赤字が1.8兆ドルとビットコインの時価総額全体を上回る規模であること、7月末の日米協調為替介入、そして8月18〜22日に米財務省が長期国債の買い戻しを倍増させたこと(8月19日には30億ドル超のショートポジション清算を誘発)を挙げた。マクロ投資家のJordi Visser氏も同様に、過大評価されたテック株の物語から実物資産的な性格を持つ資産への資金シフトを指摘していた。

この「逆流論」の裏付けとして語られていたのが、8月17日から24日にかけてNVDA株が7営業日続落し、時価総額を約4,000億ドル失った局面だ。背景にはOpenAI向けのデータセンター計算力リースに関して、NVIDIAが最大2,500億ドル規模の資金をバックストップする交渉が報じられ、供給企業が顧客企業の主要投資家でもある「循環取引」への懸念が再燃したことがある。ところが8月26日発表のNVIDIA2027年度第2四半期決算は、売上高962億ドル(前年比106%増)・EPS2.22ドルと市場予想を上回り、翌27日の株価は+7.94%の急反発となった。AI株の調整を前提にしていた資金逆流論は、決算というファンダメンタルズの転換点でいったん巻き戻された形だ。

ファンダメンタルをどう見るか

重要なのは、AI株とビットコインが「同時に」上昇している点だ。資金がゼロサムでAI株からビットコインへ移動しているなら、NVDA急伸の局面でビットコインは伸び悩むはずだが、実際には両方が同時に買われている。これは資金の逆流というより、金融緩和期待と流動性拡大を背景にした全面的なリスクオンが両資産に共通して効いていると見るほうが整合的だ。

Bank of Americaが2026年7月2日から9日にかけて機関投資家210人(運用資産合計5,550億ドル)を対象に実施した調査では、「AIバブル」を市場最大のテールリスクと回答した比率が6月の28%から7月には45%へ急上昇した。ただし内訳を見ると、48%は「AI株はバブルではない」と回答し、43%が「バブルである」と回答するなど評価は割れている。48%はAI関連の巨額設備投資を、信用イベントの震源になりうる最有力候補として挙げており、循環取引への警戒は依然として根強い。NVDA決算の好調で目先の需給は改善したが、警戒そのものが消えたわけではない点には留意が必要だ。

資金はどこへ動いているか

BTC現物ETFは8月28日時点で8営業日連続の純流入となり、直近のストリークだけで28億ドル、8月の月間流入額は累計30.3億ドルに達した。これは2026年で最も強い月間流入で、2025年10月の水準まであと3.9億ドルに迫っている。ETH現物ETFも同じく8営業日連続の流入を記録し、8月26日単日で1.92億ドルを追加、ストリーク累計は10億ドルを超えた。

一方でAIセクター全体への資金流入は、BTC・ETHの勢いに比べると明らかに鈍い。TAOのような個別材料(Base L2進出やETF申請思惑)が先行する銘柄は大きく動く一方、セクター全体の時価総額の伸びは24時間で+0.9%にとどまっており、「AI関連トークンへの逆張り的な資金シフト」というより「BTC・ETHへの資金集中」が今回の主眼と読むのが妥当だろう。

過去の類似局面との比較

2026年に入ってからも、AI株とビットコインの綱引きは繰り返されてきた。年初にはビットコインが10万ドルから6万ドル台まで下落する過程で資金がAI関連株式へ流入した局面があり、第1四半期には機関投資家の資金が暗号資産からAI株式へシフトしたとの分析も出ていた。今回はその逆方向の動きとして語られ始めたが、NVDA決算という単発の好材料で早くも巻き戻された点は、この手の「資金逆流論」が持続的なトレンドというより、局面ごとの需給に左右されやすいことを示している。BofA調査の警戒度上昇(28%→45%)自体は7月時点のデータであり、8月後半の実際の値動きが追いついていない可能性もある。

注目銘柄と価格水準

BTCは8万765ドル前後で推移しており、8月25日には一度8万1,000ドル付近まで上伸したのち50週移動平均線に反落した経緯がある。この水準を明確に上抜けられるかが当面の焦点になる。NVDAは226.31ドルまで戻し、決算前の水準を回復した格好だが、循環取引への懸念が再燃すれば材料視されやすい株価水準でもある。TAOは250ドル台後半で推移し、8月23日以降の週間上昇率は20%を超える場面もあった。過熱感を示すシグナルが出ていた経緯もあり、短期的な伸び代には注意が必要だろう。

想定されるシナリオとリスク、そしてまとめ

上振れシナリオとしては、9月のFOMC(9月16日)で利下げ期待が強まり、AI株・ビットコインの双方に追い風が続くケースが考えられる。この場合、BTC ETFの資金流入ストリークがさらに伸び、8万1,000ドル超えを試す展開もあり得る。下振れシナリオとしては、OpenAI向け計算力リースの循環取引懸念が再び強まり、AI株が調整局面に入った場合、BTCが本当に「安全な逃避先」として機能するのか、それとも同時に売られるのかが試される。過去の急落局面ではリスク資産全般が同時に売られる場面も見られており、単純な資金逆流のシナリオ通りに進む保証はない。

8月28日時点のデータを見る限り、AI株からビットコインへの単純な資金逆流は起きておらず、NVDA・BTCともに同時高という結果になっている。BTC ETFの8日連続流入という強い需給要因は事実として存在するものの、それがAI株の弱含みに起因するとは言い切れない。BofA調査が示すAIバブル警戒の高まりと、実際の株価・トークン価格の動きにはまだギャップがあり、この綱引きがどちらに転ぶかは9月のマクロイベント次第という段階だ。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。