ビットコインは7月20日、6万3,900ドルまで下押しし日中で1.3%安となった。週間ベースでは2%高を保っているものの、AI関連銘柄はこの戻りにほとんど乗れていない。背景にあるのは、ブレント原油が一時91.41ドルと1カ月ぶり高値を付けた外部ショックと、7月に145銘柄・総額3億7,639万ドル規模で予定されたトークンアンロックという、需要と供給の両側からの圧力である。

相場は「AI売りの残り火」と「地政学」の板挟みにある。以下では数字で現状を押さえたうえで、この二重の売り圧がどこまで続きうるかを検証する。

いま相場で何が起きているか

7月20日時点の主要銘柄は以下の通り。ビットコインは6万3,900〜6万4,245ドル圏で推移し、日中では1.3%安、週間では2%高。イーサリアムは1,850〜1,867ドルで小幅安。XRPは1.09ドルで0.45%安、BNBは564ドルで0.8%安、ドージコインは1.4%安となった。相対的に堅調だったのはソラナで、76.30ドルと0.37%高。一方でHyperliquid(HYPE)は60ドル前後と週間で8%安と沈んでいる。市場全体を示すCD20指数は1,745.52ポイントで0.37%安だった。

AIセクターに目を移すと、CoinGeckoのAIカテゴリの合計時価総額は約220億ドル。5月下旬に260億ドルを超えた水準からは縮小したままで、7月前半の下落分を取り戻せていない。個別では7月中旬時点でFETが0.16ドル前後・時価総額約3億6,000万ドル、VIRTUALが0.63ドル・約4億1,400万ドルと、いずれも2024年から2025年にかけての高値圏からは大きく水準を切り下げている。

もっとも、7月19日にかけてはNEARが3.3%高、FETが1.7%高と、AI銘柄の一部に買い戻しも入っていた。問題はその買い戻しが持続するかどうかであり、そこに2つの外部要因が重なっている。

何がこの動きを作ったか

第一の要因は原油と地政学だ。ブレント原油は一時91.41ドルまで上昇し、1カ月ぶりの高値を付けた。7月20日時点でホルムズ海峡は商用船舶に対して事実上閉鎖された状態にあり、7月14日には海上封鎖が再開されている。供給不安が現実の物流制約として続いていることが、原油の高止まりを支えている。

第二の要因はAI株側の調整である。7月中旬にかけて、中国勢による新型AIモデルの投入と、巨額のAI設備投資が収益にどこまで結びつくのかという疑念が重なり、半導体・AI関連株が売られた。韓国KOSPIが3.5%安となるなど、アジア株にも波及している。仮想通貨市場のAI銘柄は、プロダクトの進捗よりもAI株の連想で売買される度合いが高く、この調整の受け皿になった。

第三が供給側、すなわちトークンアンロックだ。7月は145銘柄・総額3億7,639万ドルの解放が予定される月であり、AI・インフラ系ではFET、KAITO、AIなどが含まれる。個別に目立つのがKAITOで、7月20日12時UTCに1,760万枚(約1,659万ドル相当)が解放された。集計元により流通供給比は4〜7%台と幅があるが、いずれにせよ小さくない比率である。

ファンダメンタルをどう見るか

原油とAI株はいずれもAI銘柄にとって外生変数であり、プロジェクトの収益やオンチェーン指標が悪化したわけではない。この点で、今回の下押しは「ファンダメンタルの毀損」ではなく「バリュエーションの再評価」に近い。

ただし、アンロックだけは性質が違う。これは需給そのものの構造変化であり、外部環境が改善しても消えない。KAITOのケースを見ると、アンロック直前の資金調達率は7月18日の0.0039%から0.0021%へ低下していた。プラス圏ではあるがレバレッジの買い持ちは薄くなっており、受け渡し前にポジションを落とす動きがあったことを示唆する。同時に無期限先物の建玉は24時間で15%増の1億2,200万ドルまで積み上がっており、方向感の定まらないまま新規の建玉だけが増えていた。現物では売り310万ドルに対して買い277万ドルと、わずかに売り超だった。

KAITOの価格は0.9424ドル、時価総額は約2億2,763万ドル、24時間出来高は約5,568万ドル。出来高に対して1,659万ドルの新規供給は、一日で吸収されるには重く、数日かけて消化される規模といえる。アンロック当日に13%高となった局面もあったが、資金調達率の低下と現物の売り超という内訳を踏まえると、この上昇を素直な需要回復と読むには材料が足りない。

資金はどこへ動いているか

BTCドミナンスは56.3%前後、暗号資産の総時価総額は約2.28兆ドルとなっている。ETF資金フローについては、6月にビットコイン現物ETFで約45億ドルの純流出を記録し、7月に入ってから一部で流入が戻る日が出てきた。ただし、この戻りの資金はBTCとETHに集中しており、AIセクターまでは届いていない。AIセクター時価総額が220億ドル前後で頭打ちになっているのは、その裏返しである。

デリバティブ側では、ビットコインの資金調達率が8時間あたり0.0008%とほぼフラット。買い持ちにも売り持ちにも偏っていない中立的な状態で、強制的な巻き戻しが起きにくい代わりに、方向を出すには新規の資金が要る局面といえる。

アンロックのカレンダーは今後も継続的な供給要因として残る。7月の3億7,639万ドルは絶対額としては極端に大きくないが、AI銘柄のように時価総額が数億ドル規模まで縮んだセクターでは、同じ金額でも相対的な重さが変わる。時価総額4億ドルの銘柄に対する1,600万ドルの供給は、時価総額の4%に相当する。

過去の類似局面との比較

同型の局面は2025年前半にも起きている。AIエージェント銘柄が急騰した2025年初頭、AI16Z、ARC、Zerebroといった銘柄が72時間で54%、34%、40%の上昇を記録した。このときの上昇はメモコインからの資金ローテーションが主因で、プロダクトの収益改善によるものではなかった。結果として、資金の流れが変わった局面で同じ速度で剥落している。VIRTUALが2025年初頭のピークで50億ドルの時価総額を付けながら、2026年7月中旬には4億1,400万ドル前後まで縮んだのは、その典型例である。

この前例が示すのは、AI銘柄の値動きが「外部からの資金流入の有無」に強く依存し、ファンダメンタルの積み上げが下値を支える段階に至っていないという点だ。今回も、原油とAI株という外部要因が主導している以上、その要因が改善するまでは自律反発の持続力は限定的とみるのが素直だろう。

逆の見方もできる。外生要因が主因であるなら、要因が剥落したときの戻りも速い。実際、7月19日にNEARが3.3%高、FETが1.7%高となったのは、AI株の下げが一服した局面と重なっている。問題は、その反発をアンロックの供給が打ち消してしまうかどうかである。

注目銘柄と価格水準

KAITOは0.9424ドル、時価総額約2億2,763万ドル。7月20日のアンロック分がどの程度の日数で消化されるかが当面の焦点で、資金調達率が0.0021%からさらに低下するようなら、買い持ちの後退が続いていると読める。

FETは0.16ドル前後、時価総額約3億6,000万ドル。7月中にアンロックが予定される銘柄の一つであり、AIセクター全体の代表格として資金流入の有無を測る指標になりやすい。NEARはAI関連の大型銘柄として、7月19日に3.3%高と反発を主導した。セクターの戻りが本物かを判断する際、この2銘柄の連動が一つの手掛かりとなる。国内取引所ではFETとNEARが取り扱われているケースがある一方、KAITOやAIエージェント系の新興銘柄は取扱いが限られる。

ビットコインで意識される水準は、6月以降に複数回攻防となった6万ドルの節目と、7月を通じて上値を抑えてきた低7万ドル台のレンジ上限である。7月20日時点で6万3,900〜6万4,245ドル圏にあり、レンジのほぼ中央に位置する。イーサリアムは1,850ドル近辺で、7月に何度か下値を確認した1,700ドル台前半が下方の意識される水準となる。

想定されるシナリオとリスク

上方シナリオとしては、ホルムズ海峡の情勢が緩和して原油が90ドルを明確に割り込み、同時にAI株が下げ止まりを確認する展開が考えられる。この場合、AI銘柄は外生的な売り圧が剥がれるため、7月19日に見られたNEARやFETの反発が広がる余地がある。確認すべきは、AIセクター時価総額が220億ドルから240億ドル台へ切り返せるかどうかである。

下方シナリオでは、原油が高止まりしたまま利下げ期待が後退し、AI株の調整が第二波に入る展開が想定される。ここにアンロックの供給が重なると、AI銘柄は買い手不在のまま値が飛びやすくなる。ビットコインが6万ドルを割り込む場面では、AI銘柄はそれ以上の下落率になりやすい点に注意が要る。

個別のリスクとしては、アンロック直後の価格上昇を回復の兆候と誤読することが挙げられる。KAITOの13%高のように、供給イベント当日に上昇する例は珍しくないが、資金調達率の低下や現物の売り超が併存している場合、その上昇は需要回復を意味しない。数字の内訳を確認せずに追随すると、短期のリバウンドを掴む形になりやすい。

また、原油と地政学は予測が難しく、シナリオの前提そのものが数日で入れ替わりうる。この局面でポジションサイズを大きくすることの合理性は乏しい。

まとめ

トレーダーが持ち帰るべき点は3つある。第一に、7月20日時点のAI銘柄の弱さはプロジェクト側の問題ではなく、原油91ドル台とAI株調整という外部要因が主因であること。第二に、7月の145銘柄・3億7,639万ドルのアンロックは外部要因が改善しても残る供給圧力で、時価総額の縮んだAIセクターでは相対的な重さが増していること。第三に、アンロック当日の価格上昇は資金調達率と現物の売買内訳を確認しない限り、需要回復のシグナルとして扱えないこと。

ビットコインの6万ドル、AIセクター時価総額の220億ドルという2つの水準が、当面の判断の起点になる。なお編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。