Web3 AI銘柄の次の焦点は「AIそのもの」か

Web3とAIを組み合わせた銘柄群は、これまで「分散GPU」「学習インフラ」「データ供給」といった土台の整備が主な論点でした。ところが直近では、その上に乗るAIエージェントや、AIがアウトカムを決める情報市場が注目を集めています。Gensynが公開したDelphiは、その変化を象徴する事例です。

Delphiが示すのは「市場の作り方」の変化

The Blockによると、GensynはAIで決済される分散型情報市場「Delphi」を公開しました。ここで重要なのは、単なる予測市場ではなく、AIが結果を判定し、収益が自動分配される設計にある点です。Gensynは、従来の予測市場のように中央集権的な運営者が上場判断や結果判定を担う形ではなく、より細かなニッチテーマを扱える「情報市場」を目指していると説明しています。

DelphiはEthereum上のOP StackベースのL2として構築されており、AIによる判定と再実行可能な環境を組み合わせることで、結果の検証可能性を高める設計です。テストネット段階では「数百万ドル規模」の取引量があったとされ、メインネットは数週間以内の公開が見込まれています。

この動きがWeb3 AI銘柄に与える示唆は大きいです。これまでの「AIインフラ銘柄」は、どちらかといえば企業や開発者向けの裏方に近い存在でした。しかしDelphiのような仕組みが普及すれば、評価軸は「どれだけGPUを持つか」だけでなく、どれだけAIを収益化する市場を作れるかへ広がります。これはインフラ銘柄の物語を、利用層に近い領域へ押し上げる変化といえます。

AIエージェント・トークンは「実行主体」を表す資産に近い

The Blockは4月20日付の記事で、AIエージェント・トークンを「特定のエージェントに紐づく暗号資産」と整理しました。従来のAI関連トークンが分散計算やデータ供給などの基盤に寄っていたのに対し、新しい潮流はAIエージェント自身の活動を支えるトークン設計へ移っています。

この整理で注目したいのは、AIエージェントが内容生成、資本運用、ユーザー対応などを自律的に担うにつれ、トークンが「報酬」や「収益分配」の器として機能し始める点です。つまり、従来のWeb3銘柄がネットワークの利用料や供給報酬を軸にしていたのに対し、AIエージェント系では行動そのものが経済活動になる可能性がある、ということです。

もっとも、The Blockはこの領域をまだ初期段階だと位置づけています。つまり、仕組みが新しい一方で、性能評価・実運用・安全性・ガバナンスはまだ検証途上です。Web3 AI銘柄を見る際は、トークンの物語だけでなく、実際に何を自動化し、誰が検証し、どこで価値が回収されるのかを確認する必要があります。

Bittensorは「分散学習が現実味を持つ」ことを示した

4月2日のThe Block記事では、BittensorのTAOが3月にほぼ倍化し、分散学習の実用性が再評価されたと報じられました。記事では、サブネット3が70以上の分散ノードで72B規模のモデルを許可なしに学習させ、MMLUで競争力のあるスコアを示したことが紹介されています。さらに、TAOの発行済み数量のうち大きな比率がステーキングされている点も、ネットワーク設計への信認を示す材料として挙げられました。

ただし、同時期にはCovenant AIの離脱をめぐる議論もあり、分散AIにおける理想と運用上の難しさは別問題であることも浮き彫りになっています。The Blockは、こうした出来事がTAOの価格変動と並行して起きていると伝えました。

ここから読み取れるのは、Bittensorが単純な「AIテーマ銘柄」ではなく、分散学習がどこまで成立するかを試す実験場として見られていることです。市場が評価しているのは価格そのものより、分散環境でモデルが成立するという実証に近い面です。

Web3 AI銘柄を見るときの実務的な見方

Web3 AI銘柄は、同じ「AI」を名乗っていても中身がかなり異なります。ざっくり分けると、以下の3層で見ると整理しやすくなります。

  • インフラ層: 分散GPU、データ供給、学習基盤
  • 実行層: AIエージェント、オンチェーン自動化
  • 市場層: 情報市場、予測市場、検証可能なオラクル

このうち、最近のニュースで存在感が増しているのは実行層と市場層です。理由は明確で、インフラがどれだけ優れていても、最終的にユーザーが触るのは「何ができるか」だからです。GensynのDelphiは市場層、AIエージェント・トークンは実行層、Bittensorはインフラ層の成熟度を示す材料として、それぞれ別の角度からWeb3 AIの現在地を示しています。

まとめ

Web3 AI銘柄の注目点は、単なる「AI関連」から、AIをどう収益化し、どう検証し、どう自律実行させるかへ移っています。GensynのDelphi、AIエージェント・トークンの整理、Bittensorの分散学習事例は、いずれもこの転換を示す材料です。今後は、トークンの値動きだけでなく、実際のプロダクトがどこまで使われるかが、テーマの持続性を判断するうえで重要になります。