金融庁ら4省庁が要請 暗号資産を使った不動産取引の犯罪悪用をどう防ぐのか
2026年4月28日、金融庁は国土交通省・警察庁・財務省とともに、暗号資産を用いた不動産取引に関する要請を公表しました。要請の対象は業界団体等で、暗号資産を利用した不動産売買が犯罪収益の移転やマネー・ローンダリングに悪用されることを防ぐ狙いがあります。金融庁は同日付で、この要請を正式に案内しています。
なぜ不動産取引が焦点になったのか
不動産取引は、もともと高額かつ複雑な決済が発生しやすく、資金の出どころや取引実態の確認が重要になる領域です。国土交通省は、宅地建物取引業者が犯罪収益移転防止法の枠組みの中で、取引時確認や疑わしい取引の届出などの義務を負うことを案内しており、不動産業がAML/CFTの重要な接点になっていることが分かります。
一方、警察庁の犯罪収益対策に関する資料では、暗号資産や電子マネーが犯罪収益の移転手段として使われるケースが示されており、匿名性や国境をまたぐ移転のしやすさが捜査・追跡を難しくする点が問題視されています。
4省庁の要請で何が変わるのか
今回の要請は、暗号資産で不動産を買えること自体を直ちに禁止するものではありません。焦点は、取引の実務でリスクをどう拾うかです。つまり、購入資金の原資確認、送金経路の把握、顧客の実質的支配者の確認、異常な取引パターンのモニタリングといった、既存のコンプライアンスをより厳格に運用する方向性が中心になるとみられます。これは、不動産業界が元々担っている本人確認・疑わしい取引対応を、暗号資産絡みのケースに合わせて強める流れといえます。
また、金融庁は近年、暗号資産の制度面をめぐって金商法移行の議論も進めています。2026年4月23日の説明会では、暗号資産を金融商品として扱う制度見直しや、ブロックチェーンを活用した決済高度化の取り組みが紹介されました。今回の要請は、そうした制度議論とは別に、現場の不正対策を先に引き締める動きと見ることができます。
暗号資産業界にとっての論点
今回のニュースは、暗号資産の利用シーンが「投資」だけでなく、実物資産の売買に広がるほど、規制・監視の視点も広がることを示しています。とくに不動産は、価格が大きく、送金の正当性確認が難しいため、暗号資産の利便性がそのままリスクにもなりやすい領域です。
実務上は、取引所、カストディ事業者、宅建業者、司法書士、金融機関など複数のプレーヤーが連携しないと、資金の流れを十分に把握できません。今回の4省庁連名の要請は、まさにその連携を促すシグナルと受け止められます。
読者が押さえておきたいポイント
個人の暗号資産保有者にとって、今回の要請は「すぐに何かが禁止される」という話ではありません。ただし、今後は暗号資産を使った高額決済や不動産取引に対し、本人確認や資金の出所説明を求められる場面が増える可能性があります。これは、暗号資産が社会に浸透するほど、利用者側にも透明性が求められることを意味します。
また、事業者側にとっては、顧客管理と取引モニタリングの設計がより重要になります。新規口座や高額送金、短期間での資金移動、暗号資産から法定通貨への換金、そして不動産購入のような高額実需に接続する局面では、通常以上の確認が必要になると考えるのが自然です。
まとめ
今回の4省庁要請は、暗号資産の「使える範囲」が広がる一方で、その分だけ犯罪悪用の余地も増えるという現実を示しています。市場の値動きそのものよりも、暗号資産が実社会の取引に入っていくほど、AML/CFTの実務がどこまで整備されるかが重要な論点になりそうです。
