AI仮想通貨自動売買とは、価格データや売買ルールの判断を人間ではなくプログラム(またはAIモデル)に任せ、注文の発注までを自動で行う仕組みの総称である。結論を先に書く。2026年7月時点で日本の個人が現実的に選べる手段は5つあり、「どれが一番優れているか」ではなく「自分がどこまで手を動かせるか」で選ぶべきものが変わる。
具体的には、コードを一切書きたくないなら取引所ネイティブのbotかコピートレード、自分のルールを持っているならAPIでの自作bot、判断ロジックの設計から任せたいならAIエージェント構成、という分岐になる。この記事では5つの選択肢を同じ物差しで比較し、それぞれの初期費用・毎月の実費・向き不向き・実際に踏んだ失敗までを整理する。
30秒でわかる:AI自動売買5つの選択肢の比較表
まず全体像を表で押さえてほしい。この表の縦軸が、この記事で扱う5つの選択肢である。
| 選択肢 | 必要スキル | 初期費用の目安 | 月あたりの実費 | 判断を誰がするか | 主な稼働場所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1. 取引所ネイティブbot | なし(画面操作のみ) | 取引資金のみ | 取引手数料のみ | 事前に決めたルール | Bitget |
| 2. コピートレード | なし(トレーダー選定) | 取引資金のみ | 手数料+利益分配 | 他人のトレーダー | Bitget / BTCC |
| 3. AIチャットで分析補助 | 低(文章で指示) | 取引資金のみ | AI利用料 月20〜30ドル程度 | 最終判断は自分 | 手動発注 |
| 4. APIで自作bot | 中〜高(プログラミング) | 資金+開発時間 | 手数料+サーバー代 数ドル〜 | 自分が書いたコード | Bitget API |
| 5. AIエージェント構成 | 中(環境構築と監視) | 資金+構築時間 | AI利用料+手数料+ガス代 | AIが設計したロジック | API / DEX |
「できること」と「限界」も先に区切っておく。
| 観点 | できること | できないこと(限界) |
|---|---|---|
| 自動化の範囲 | 監視・発注・利確損切りの機械実行 | 相場そのものを当てること |
| 感情の排除 | ルールどおりの淡々とした執行 | ルールが間違っていた場合の救済 |
| 稼働時間 | 24時間365日の監視 | 取引所の障害・API停止への耐性 |
| 検証 | 過去データでの事前テスト | 未来が過去と同じ形になる保証 |
自動売買は「勝ち方を教えてくれる道具」ではなく「決めたことを休まず実行する道具」である。ここを取り違えると、どの選択肢を選んでも同じ結果になる。
前提:国内取引所の口座を持ったうえで使う
海外取引所やDEXの話に入る前に、順序を確認しておきたい。日本在住者がBitgetやBTCCといった海外サービスを使う場合、まず国内の金融庁登録業者で口座を作り、そこで日本円から暗号資産を買い、海外へ送金するという流れが前提になる。海外取引所に日本円の銀行振込先が用意されているわけではないからだ。
出口も同じである。海外で増減した資産を日本円に戻すには、再び国内取引所へ送金して売却する必要がある。つまり国内口座は「入口」であると同時に「出口」でもあり、これを持たないまま海外口座だけ作っても資金が循環しない。海外口座から先に作り始める人が多いが、順序としては国内が先だ。
国内取引所を選ぶときは、暗号資産の送金手数料が無料かどうかを見るとよい。GMOコインのように暗号資産の送金手数料が無料の業者を入口に据えると、往復のコストが目に見えて下がる。また、国内取引所はUSDTを扱っていないことが多いため、海外へ送るときはBTCまたはETHのまま送り、着金後に取引所内でUSDTへ両替するのが定石になる。送金ネットワーク(ERC20 / TRC20など)の選択を間違えると資産を失うため、ここは後述の手順で詳しく扱う。
なぜ2026年7月に「AI自動売買」を選び直す必要があるのか
理由は3つある。
第一に、日本居住者が使える海外取引所の顔ぶれが変わった。Bybitは日本居住者向けサービスを終了しており、2026年3月23日にクローズオンリー(新規建てができず決済のみ)へ移行、2026年7月22日正午に未決済ポジションが強制決済される段取りが公表されている。ここに自動売買の環境を作っていた人は、稼働先そのものを移す必要が出た。これから始める人がBybitを選ぶ理由はもうない。
第二に、相場環境が弱気に振れている。2026年上半期のビットコインは大幅な下落を経て6万ドル台まで水準を切り下げており、日本円では1,000万円を割り込む場面もあった。上昇相場を前提に組んだ自動売買ルール(買い持ちを積み増すタイプのDCAや、上方向のグリッド)は、この局面で素直に含み損が膨らむ。設定を作り直す必要がある。
第三に、AI側のコストが個人に届く水準まで下がった。数年前は「AIに売買判断をさせる」といえば機械学習モデルの自前学習が前提だったが、現在は汎用の大規模言語モデルに市況と保有状況を渡して判断構造を書かせる、という組み方が現実的になった。月20〜30ドル程度の利用料で始められる。ただし後述のとおり、これは「賢い相棒が増える」話であって「勝てるようになる」話ではない。
選択肢1:取引所ネイティブbot(グリッド・DCA)
取引所の画面内に用意されている自動売買機能を使う方法である。コードは一切書かない。5つのうち最も参入障壁が低い。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な提供元 | Bitget(現物・先物のbot機能を取引所内に持つ) |
| 主なbotの型 | グリッド(一定値幅で機械的に売買)、DCA(定額の積み増し) |
| 手数料 | 現物0.1%(BGB払いで0.08%)、先物メイカー0.02% / テイカー0.06% |
| 必要スキル | 画面上のパラメータ入力のみ |
| 最大レバレッジ | 125倍(先物) |
メリット
- サーバーもコードも不要で、取引所が動かし続けてくれる
- グリッドは「レンジ相場で値幅を刻む」という目的が明確で、初心者でも挙動を理解しやすい
- パラメータ(上限価格・下限価格・グリッド数・投入額)が数値なので、後から検証・調整しやすい
- 取引所内で完結するため、APIキー漏洩のリスクを負わない
デメリット
- botの中身は取引所が決めた型に限定され、独自の判断ロジックは入れられない
- レンジを外れて一方向に走ると、グリッドは含み損を抱えたまま機能停止する
- 往復の手数料が刻むたびに発生するため、値幅が狭すぎる設定は手数料負けする
どんな人に向くか:まず「自動で注文が出る」という体験を、最小の手間で確かめたい人。
そのまま使える出発点の設定値を置いておく。数値は必ず自分の資金量と対象銘柄のボラティリティに合わせて調整してほしい。
# 現物グリッドbotの初期設定テンプレート(保守側)
対象 : BTC/USDT(出来高が大きく板が厚い銘柄から)
価格上限 : 直近90日の高値
価格下限 : 直近90日の安値
グリッド数: 20〜30(狭すぎると手数料負けする)
投入額 : 総資金の20%以内(1本目は必ず小さく)
停止条件 : 下限を明確に割ったら手動で止めて再設計
注意 : 1グリッドの値幅 > 往復手数料(0.2%相当) を必ず満たすこと
対コピートレード:中身が見えるかどうかが最大の差
ネイティブbotは「なぜその注文が出たか」がパラメータから完全に説明できる。コピートレードは他人の判断なので説明できない。学習効率という点ではbotが上で、手離れという点ではコピートレードが上になる。
選択肢2:コピートレード
他のトレーダーの売買を、自分の口座で自動的に同じ比率で再現する仕組みである。トレーダー選びが実質的にすべてを決める。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | Bitget(コピートレード最大手クラス)、BTCC |
| 対象 | 主に先物。Bitgetは現物・bot系のコピーも用意 |
| コスト構造 | 通常の取引手数料+利益が出た場合の分配(Bitgetでは利益の最大10%程度) |
| 選定指標 | 総PnL、PnL%、勝率、運用資産残高、コピー人数など |
| 必要スキル | トレーダーの成績表を読む力 |
メリット
- 自分に売買ルールがなくても、その日から稼働できる
- 分配は利益が出た場合に発生する設計のため、固定の月額を払い続ける構造ではない
- BTCCはランキングを総合順位・総PnL・運用資産残高・PnL%・勝率・コピー取引者数などの軸で並べ替えられ、比較の入口がわかりやすい
- 複数トレーダーに分散すれば、1人の不調が全損に直結しにくい
デメリット
- 過去の成績は将来の利益を保証しない。高勝率の表示は、損切りを遅らせて含み損を抱える手法でも作れてしまう
- 自分でリスク量を制御しづらく、相手が急にロットを上げた場合に追随してしまう
- なぜその建玉になったのかが学べないため、いつまでも他人依存が続く
どんな人に向くか:時間が取れず、まずは他人の運用を少額で観察したい人。
トレーダー選定は感覚でやらないほうがいい。次のチェックを機械的に通すだけで、極端な地雷はかなり避けられる。
# コピー先トレーダーの足切りチェック(すべて満たすものだけ候補に残す)
運用期間 : 90日以上(30日の好成績は再現性が読めない)
最大ドローダウン: 30%以内(ここが最重要。勝率より先に見る)
PnLカーブ : 一直線ではなく上下しながら右肩上がり
1トレードの偏り : 単発の大勝ちが総利益の50%以上を占めていないか
建玉の作り方 : ナンピンで含み損を伸ばす型になっていないか
投入額 : 総資金の10%から。良ければ増やす、が正しい順序
対ネイティブbot:手離れは良いが、上達しない
コピートレードは稼働までの時間が最短だが、続けても自分の判断力は育たない。逆にbotは設定を触るたびに相場の理解が進む。「短期の手離れ」と「長期の自立」のどちらを取るかという選択になる。
選択肢3:AIチャットを分析の補助に使う(半自動)
ChatGPTやClaudeといった対話型AIに市況・保有状況・ルールを渡し、判断の材料を作らせる方法である。発注は自分の手で行うため、厳密には「自動売買」ではなく「半自動」だ。だが実務上、最初にここを通ると失敗が減る。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要なもの | 対話型AIの有料プラン(月20〜30ドル程度) |
| 自動化される範囲 | 情報整理・シナリオ出し・ルールの言語化 |
| 発注 | 自分で行う |
| リスク | AIが古い情報や誤った数値を出すこと |
メリット
- 費用が月20〜30ドル程度で済み、失敗しても失うのは時間だけ
- 自分の売買ルールを言語化する過程そのものが、後の自動化の設計図になる
- 「なぜこの判断か」を毎回説明させられるので、根拠の薄いエントリーが減る
デメリット
- AIは価格を予測できない。もっともらしい文章は書けるが、それは根拠の強さとは別物である
- 最終的に人間が発注するため、感情による逸脱を防げない
どんな人に向くか:いきなり資金を機械に預けるのが怖い人。全員がここから始めてよい。
そのまま貼って使える指示文を置いておく。これは編集部が実運用のルール設計時に使っている構造を、汎用化したものだ。
あなたは暗号資産のリスク管理担当です。売買の推奨はせず、条件整理だけを行ってください。
【入力】
- 銘柄:
- 現在価格:
- 直近30日の高値/安値:
- 私の保有: (数量・平均取得単価・含み損益)
- 総資金に対するこの建玉の比率:
【出力してほしいこと】
1. いまがレンジ相場かトレンド相場か、判断の根拠を2つ以上あげて分類
2. レンジならレンジ端の水準、トレンドなら押し目候補の水準を数値で
3. 損切り水準を「その水準を割ったら前提が崩れる」という理由付きで1つ
4. この建玉サイズが総資金比で過大かどうかの指摘
5. 上記の判断が外れるとしたら、どの前提が崩れたときかを2つ
【禁止】
- 「上がる」「買い」などの断定
- 根拠のない価格目標
- 入力にない数値の創作
選択肢4:APIで自作botを回す
取引所のAPIキーを発行し、自分で書いたプログラムから発注する方法である。自由度は最も高いが、責任も全部自分に来る。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応取引所 | Bitget(REST / WebSocket、現物・先物・コピトレ系API、APIキーのIP制限に対応)、BTCC(REST中心・先物) |
| 必要スキル | Python等でのコーディング、サーバー運用 |
| 追加費用 | VPS等のサーバー代(小規模なら月数ドル〜) |
| 手数料 | 通常の取引手数料と同じ(先物メイカー0.02% / テイカー0.06%) |
メリット
- 判断ロジックを完全に自分で決められる。取引所の用意した型に縛られない
- 過去データでの検証(バックテスト)と本番のロジックを共通化できる
- 複数銘柄・複数戦略を並列で回せる
- APIキーにIP制限をかけられる取引所を選べば、鍵が漏れても発注元を絞れる
デメリット
- バグが直接損失になる。実際、編集部の検証運用では特定銘柄の発注が通らないバグに遭遇し、発注監視(watchdog)の仕組みに差し替えて解消した
- 「バックテストでは勝てた」が本番で再現しないことが常態的に起きる
どんな人に向くか:既に自分の売買ルールがあり、それを機械に写したい人。
APIキーを作るときの設定は、次のとおりに固定してよい。
# 取引所APIキーの安全設定(自作bot・エージェント共通)
権限 : 読み取り + 取引(★出金権限は付けない)
IP制限 : bot稼働サーバーの固定IPのみ許可
保管 : 環境変数に格納。ソースコードやリポジトリに直書きしない
鍵の分離 : 検証用と本番用でキーを分ける
定期作業 : 90日ごとにローテーション、不要になった鍵は即削除
異常時 : 想定外の約定を検知したら、まずキーを無効化してから原因調査
対AIエージェント:書くのが自分かAIかの違い
自作botは「ロジックを人間が書く」、AIエージェントは「ロジックの設計と実装をAIに任せる」。品質の差はスキルより監視体制で決まる。どちらも、動かしっぱなしで放置した瞬間に事故が起きる点は同じである。
選択肢5:AIエージェントに判断とコードを任せる
対話型AIに実行環境(ターミナルやAPIアクセス)を与え、市況の取得・判断・発注・改善までをひと続きで回させる構成である。2026年時点で最も新しく、最も検証が必要な領域だ。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構成要素 | AIエージェント+取引所API(またはDEXのコントラクト) |
| 月あたりの実費 | AI利用料 月20〜30ドル程度+取引手数料+(DEXならガス代) |
| 必要スキル | 環境構築とログを読む力。コーディングは代替可能 |
| 最大の課題 | 監視と停止条件の設計 |
メリット
- 戦略の実装・修正のサイクルが短い。ルール変更を文章で指示できる
- 判断の理由をログとして残しやすく、後から検証できる
- 相場のモード(レンジ / トレンド)で挙動を切り替えるといった複雑な条件も組みやすい
デメリット
- AIが誤った前提で自信満々に動くことがあり、監視なしでは破綻する
- DEXで動かす場合、ガス代が固定費として乗るため小さな建玉では利益が残らない
どんな人に向くか:検証そのものを目的にできる人。生活資金を投じる場所ではない。
編集部は2026年4月から、Claude Codeにトレードを任せる検証運用を実口座で継続している。オンチェーンDEX(GMX)のパーペチュアルを対象に、毎朝6時に起動して翌朝に自己終了する日次セッションで24時間監視させる構成だ。入金は当初188ドル、その後400ドルを追加し、2026年7月上旬にオンチェーン記録と突き合わせた監査では実現損益は約-21ドルだった。設定はレバレッジ10倍、利確+3.5%、損切り-4.5%、トレーリングストップ併用、建玉下限400ドル。詳細は当サイトの運用実績ページで公開している。この記事の手順は、実際に資金を入れて動かした人間が書いているという点だけ受け取ってほしい。
対コピートレード:他人に預けるか、自分の設計に預けるか
コピートレードは「上手い人の判断」を買う。AIエージェントは「自分が設計した判断」を休まず実行させる。前者は成績が読めない他人に依存し、後者は自分の設計ミスがそのまま損失になる。どちらもリスクの置き場所が違うだけで、リスクが消えるわけではない。
用途別のおすすめ早見表
総合1位は置かない。目的が違えば答えが変わるからだ。順位付けの基準は「始めるまでの時間」「毎月の実費」「うまくいかなかったときに原因を特定できるか」の3点である。
| あなたの状況 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 何もわからない・まず体験したい | 選択肢3(AIチャット補助) | 失うのは時間だけ。ルールの言語化が資産になる |
| コードを書かずに自動で回したい | 選択肢1(ネイティブbot) | 設定が数値なので原因を特定できる |
| 時間が全く取れない | 選択肢2(コピートレード) | 最短で稼働。ただし少額から |
| 自分のルールが既にある | 選択肢4(自作bot) | 自由度が最も高い |
| 検証・研究が目的 | 選択肢5(AIエージェント) | 新しい領域。生活資金は入れない |
| デモで挙動だけ試したい | BTCCのデモ口座 | 10万USDT相当の仮想残高で練習できる |
やってはいけないこと・実際にやらかした失敗例
ここは中盤に置く。始める前に読んでほしいからだ。
- 建玉が小さすぎる状態でコスト構造を無視する。編集部の検証運用では、ガス代に対して建玉が小さく、利確条件に達しても手数料負けして利益が残らない期間があった。建玉の下限を400ドルに設定して解消した。手数料とガス代を引いた後に残る数字で考える必要がある。
- 早すぎる損切りを機械的に入れる。ノイズで刈られ続け、方向が合っていた建玉まで失う。編集部は早期損切りのロジックを廃止し、トレーリングストップに切り替える全面リライトを2026年7月に行った。
- バックテストの結果を信じ込む。過去データに合わせて調整すると、その期間だけ勝つルールが出来上がる。期間を分けて検証しないと意味がない。
- APIキーに出金権限を付ける。自動売買に出金権限は不要である。付けた瞬間、鍵の漏洩が資産の全損に直結する。
- 最大レバレッジを使う。125倍や250倍という数字は「使える上限」であって「使うべき水準」ではない。レバレッジを上げると清算までの値幅が同じ比率で狭くなるため、日中の通常の値動きで飛ぶ。
- 1つのbotに全資金を入れる。停止条件を決めずに動かすと、想定外の相場で損失が膨らみ続ける。
- 稼働させたまま放置する。取引所のメンテナンス、API仕様変更、ネットワーク障害はいずれも起きる。動いている前提で放置すると、止まっていたことに数日気づかない。
- 利益が出た年の確定申告を忘れる。国内・海外を問わず、暗号資産の利益は課税対象である。海外取引所は年間取引報告書を日本の様式で出してくれるとは限らないため、取引履歴は自分で保管する必要がある。
コストの実額:手数料・ガス代・AI利用料
「自動売買は無料で回る」という誤解が最も高くつく。実額で並べる。
| コスト項目 | 目安 | 発生タイミング |
|---|---|---|
| 先物取引手数料 | メイカー0.02% / テイカー0.06%(Bitget) | 建てるたび・決済するたび |
| 現物取引手数料 | 0.1%(BGB払いで0.08%、Bitget) | 約定ごと |
| コピートレードの利益分配 | 利益が出た場合に最大10%程度(Bitget) | 利益確定時 |
| 送金手数料(国内→海外) | 国内側が無料の業者を選べば0円 | 入出金ごと |
| DEXのガス代 | 1回の発注で数ドル規模になることがある | 発注ごと |
| AI利用料 | 月20〜30ドル程度 | 毎月 |
| サーバー代(自作bot) | 月数ドル〜 | 毎月 |
重要なのは往復で考えることだ。テイカーで建ててテイカーで決済すれば0.12%が消える。グリッドbotで1回の値幅が0.1%しかない設定を組むと、刻むたびに損が積み上がる。1グリッドの値幅は往復コストを明確に上回るように設計する必要がある。
DEXのガス代はさらに厳しい。1回の発注に数ドルかかる環境で建玉が100ドルなら、利確幅3.5%(3.5ドル)が丸ごとガス代に消える。コストは率ではなく実額で効いてくるというのが、編集部が実口座で学んだ最大の教訓である。
始め方の手順(ステップ1〜6)
ここから先は実際の作業手順である。順番を飛ばさないでほしい。
手順1:国内取引所で口座を開く
金融庁登録の国内業者で口座を開設し、本人確認を済ませる。日本円を入金し、送金用にBTCまたはETHを購入する。暗号資産の送金手数料が無料の業者を選ぶと、往復のコストが下がる。
手順2:海外取引所の口座を開く
自動売買botとAPIを軸にするならBitget、デモ口座で練習してからコピートレードに進みたいならBTCCを選ぶ。メールアドレスとパスワードで登録し、二段階認証を必ず有効にする。その後、本人確認(KYC)を済ませる。KYCが未完了だと出金上限がかかることがあるため、入金前に終わらせておくのが安全だ。
BTCCの口座開設では、登録時に招待コード「F35TNQ」を入力すると紹介経由の特典対象になる場合があります(内容・条件は登録画面で要確認)。コード欄は登録画面にあり、後から入力できない場合があるため、登録の時点で確認しておくとよい。
手順3:少額のテスト送金をする
いきなり全額を送らない。まず数千円相当を送り、着金を確認してから本命の金額を送る。このとき送金ネットワークの選択を必ず確認すること。送信側と受信側でネットワーク(ERC20 / TRC20など)が一致していないと、資産は戻らない。この確認を省いた損失は取り返しがつかない。
手順4:稼働方式を1つだけ選ぶ
前述の早見表から1つだけ選ぶ。同時に複数を回すのは、どれが効いているか判別できなくなるため避ける。
手順5:総資金の10〜20%で稼働させる
初回は必ず小さく。1週間動かして、想定どおりの注文が出ているかをログで確認する。想定と違う挙動があれば止めて設計に戻る。
手順6:週次で記録して調整する
約定履歴、手数料の合計、含み損益を週1回書き出す。手数料を引いた後の数字で判断する。良ければ少し増やし、説明できない損失が出たら止める。この「止める判断」を先に決めておくことが、自動売買で最も重要な設計である。
リスクと注意点:海外取引所を使う前に理解すること
- 金融庁登録がない。BitgetもBTCCも金融庁登録の暗号資産交換業者ではない。国内業者に義務づけられる顧客資産の分別管理や、破綻時の補償の枠組みは適用されない。
- サービス終了・仕様変更のリスクがある。Bybitが日本居住者向けサービスを終了し、2026年3月23日にクローズオンリー、7月22日正午に未決済ポジションの強制決済という段取りになった事例がある。海外サービスは方針が変わりうる前提で、資金を置きっぱなしにしない。
- 出金が制限される可能性がある。本人確認の追加要求、システム障害、規制対応などで出金が滞ることは実際に起こりうる。出口となる国内取引所を必ず確保しておく。
- 送金ミスは回復不能。ネットワークやアドレスを誤ると資産は戻らない。テスト送金を挟む。
- レバレッジで清算される。高倍率は必要証拠金を減らすが、清算までの許容値幅も同じ比率で狭くなる。
- APIキーの漏洩。出金権限を付けない、IP制限をかける、リポジトリに直書きしない。この3つを守る。
- 税務。暗号資産の利益は課税対象であり、確定申告が必要になる。海外取引所は日本の様式に合わせた年間報告書を出さないことが多いため、取引履歴は自分で保存しておく。具体的な取扱いは税理士など専門家に相談してほしい。
- 過去の成績は将来の利益を保証しない。コピートレードのランキングもバックテストの結果も、将来の利益を約束するものではない。
- 生活資金を入れない。自動売買は資金が失われうる前提の領域である。失っても生活に影響しない範囲で行う。
稼働前チェックリスト
動かす前に、この6項目をすべて満たしているか確認してほしい。
- 国内取引所の口座を開設し、日本円の入出金経路(出口)を確保した
- 二段階認証を有効化し、APIキーに出金権限を付けていないことを確認した
- 少額のテスト送金で着金を確認し、送金ネットワークの指定が一致していた
- 1回の往復コスト(手数料+ガス代)を実額で計算し、利確幅がそれを上回る設計になっている
- 「どうなったら止めるか」の停止条件を、金額または割合で紙に書いた
- 投入額を総資金の10〜20%以内に抑え、失っても生活に影響しない範囲に収めた
まとめ
AI仮想通貨自動売買の選択肢は、2026年7月時点で大きく5つある。取引所ネイティブbot、コピートレード、AIチャットによる分析補助、APIでの自作bot、AIエージェント構成である。
選ぶ基準は「どれが優れているか」ではない。自分がどこまで手を動かせるか、そしてうまくいかなかったときに原因を特定できるかである。何もわからない段階ならAIチャットで自分のルールを言語化するところから、コードを書かずに自動化したいならネイティブbot、時間がないならコピートレードを少額から、というのが現実的な順路になる。
そして、どの選択肢を選んでも共通するのは3つだ。国内取引所を入口と出口として先に確保すること。手数料とガス代を引いた実額で採算を考えること。そして「止める条件」を稼働前に決めておくこと。この3つを飛ばした自動売買は、方式に関係なく同じ場所でつまずく。
編集部は実口座での検証を続けており、その過程で出た失敗も含めて運用実績ページで公開している。うまくいった話だけを並べた情報より、失敗の中身が書かれた情報のほうが、これから始める人の役に立つはずだ。
<!-- INTERNAL_LINKS_RELATED -->
関連記事
<!-- INTERNAL_LINKS_RELATED -->
