ビットコインが7月28日、6万3,173ドル前後まで下落し24時間で2.8%安となる一方、Chainlink(LINK)やNEAR Protocol、Bittensor(TAO)、Artificial Superintelligence Alliance(FET)など主要AI銘柄は軒並み5〜10%超の上昇を見せた。BTC・ETHが翌29日未明のFOMC結果を控えて手仕舞い売りに押されるなか、AI銘柄だけが逆行高となった構図で、資金が一時的に特定テーマへ選別的に向かっていることを示している。

いま相場で何が起きているか

7月28日時点でBTCは6万3,173.20ドル、24時間で-2.82%。前日7月27日の6万5,141ドルからの下げ足で、週初の上昇分を吐き出す動きとなった。ETHも1,872.11ドルまで下落し、7月27日の1,945ドル水準から約3.8%の下げとなっている。仮想通貨全体の時価総額は2.26兆ドルで24時間-1.6%、BTCドミナンスは56%台(56.3〜56.5%)で目立った変化はない。対照的にAI銘柄はLINK8.30ドル+5.6%、NEAR1.67ドル+9.2%、TAO187.71ドル+5.1%、RENDER1.41ドル+4.8%、VIRTUAL0.5633ドル+7.0%、FET0.1408ドル+9.8%と軒並み急伸し、AIセクター全体でも24時間+3%台前半の集計値が伝わっている。恐怖強欲指数は29(恐怖)で前日の30からわずかに低下したが、1週間前の25(極度の恐怖)からは持ち直している段階だ。

何がこの動きを作ったか

AI銘柄逆行高の背景として市場で最も語られているのは、Chainlinkが担う機関投資家向けインフラの実績だ。米証券預託清算機関(DTCC)は7月15日、ChainlinkのCCIP(Cross-Chain Interoperability Protocol)とCRE(Runtime Environment)を使い、トークン化した株式・ETF・米国債の本番取引をBlackRock・JPモルガン・ゴールドマン・サックス・バンガードなど30〜40社超の参加のもとで実行したと発表した。これは2026年第4四半期に稼働予定のDTCC Collateral AppChain(担保管理の自動化基盤)に向けた実証実験で、LINKには週間14百万枚超の買い集積、保有額10万ドル相当以上のウォレットが過去最多の805件に達するなど大口の資金流入も確認されている。直近1週間でも1.58百万枚(約1,320万ドル相当)がバイナンスから出金されたとの観測が出ている。Bittensor(TAO)についても、6月末に総サブネット容量を128から256へ倍増させた「Robin τ」拡張の需要が引き続き材料視され、開発者の新規参入が続いていることが下支えとなっている。一方でBTC・ETHの下落は、7月23日・24日に現物ETFから合計4億6,500万ドル超が流出し7営業日連続の流入記録が途切れたこと、FOMCの結果発表(7月29日午後2時・米東部時間)を控えた持ち高調整が主因とみられる。

ファンダメンタルをどう見るか

今回の材料を一過性の思惑買いと実質的な変化に分けて整理すると、DTCCの実証実験は既に実行された事実であり、機関投資家がChainlinkのインフラを採用したこと自体は実質的な進展といえる。ただし本番稼働は2026年第4四半期予定であり、収益やLINKのステーキング需要への具体的な反映はこれからだ。現時点の株価上昇は、実需の裏付けというより「機関マネーが将来入ってくる」という思惑を先取りした動きに近い。Bittensorについても、サブネット数の拡大自体はネットワークの利用可能枠が増えたに過ぎず、実際の需要(サブネット登録数・手数料収入)の増加が伴うかは今後のオンチェーンデータで確認する必要がある。実際、7月中旬にもBittensorのETF申請思惑とサブネット拡張を材料にAIセクターが反発した局面があったが、その後BTCが反発に転じると数日でAI銘柄の優位は解消されている。材料の「事実の部分」と「期待の部分」を切り分けて評価すべき局面といえる。

資金はどこへ動いているか

BTC現物ETFは週間ベースでは3週連続の資金流入(週間+3,380万ドル)を維持したものの、7月23日に-2億2,520万ドル、24日に-2億4,010万ドルと週後半に失速し、IBIT単独で4億1,500万ドル近い流出が出た。ETH ETFへの資金シフトは限定的で、むしろAI銘柄側への資金集中がより明確な形になっている。BTCドミナンスは56%台からほぼ動いておらず、アルトコイン全体への資金ローテーションというより、DTCC材料を持つLINKや大型アップグレードを抱えるTAOなど、個別の材料がある銘柄へ資金が選別的に入った可能性が高い。デリバティブ市場でもBTC先物建玉は5月末ピークから3割超縮小した水準にとどまっており、レバレッジを積み増しての全面的なリスクオン転換ではなく、FOMCを控えた戦術的なポジション調整という色彩が強い。

注目銘柄と価格水準

Chainlink(LINK)は8.30ドル前後で、直近安値圏からの戻り局面にある。心理的節目の8.50ドル、次いで直近高値圏の9ドル台を超えられるかが焦点となる。NEAR Protocol(NEAR)は1.67ドルまで9%超上昇し、7月に入ってからのレンジ上限を試す動きだ。Bittensor(TAO)は187ドル台で、200ドルの節目回復が意識される水準にある。Virtuals Protocol(VIRTUAL)は0.56ドル台、Artificial Superintelligence Alliance(FET)は0.14ドル台で、いずれも時価総額が小さいため値動きが大きくなりやすい点には注意したい。LINK・NEARは国内主要取引所でも取扱いがあるが、TAO・VIRTUAL・FETは海外取引所中心の銘柄で、購入可否は各社の取扱銘柄一覧の確認が必要になる。

想定されるシナリオとリスク

FOMCで市場予想通り(付与確率63〜65%)政策金利が3.50〜3.75%で据え置かれ、声明文がハト派寄りであれば、BTC・ETHの戻りとともに資金が主要銘柄へ回帰し、AI銘柄の逆行高は一服する可能性がある。一方、タカ派サプライズや25bpの金利変更(市場予想35%程度)が現実になれば、BTC・ETHだけでなくAI銘柄を含む全面安に転じるリスクがある。逆に、DTCCの実証実験を機にChainlinkへの機関投資家の関心がさらに強まれば、AI銘柄の中でもLINKを中心とした選別的な資金流入が数週間単位で続く展開も想定される。いずれのシナリオも価格の方向を断定するものではなく、条件付きの見立てである点に留意されたい。

まとめ

7月28日はBTC・ETHがFOMC控えの手仕舞いで2〜4%安となる一方、LINK・NEAR・FET・TAOなど主要AI銘柄が5〜10%の逆行高となった。背景にはDTCCのトークン化証券取引でのChainlink採用実績とLINKへの大口買い集積があり、Bittensorのサブネット拡張需要も下支えしている。ただしBTCドミナンスはほぼ変わらず、資金ローテーションというより個別材料への選別買いに近い動きだ。29日のFOMC結果が今回の逆行高の持続性を左右する分水嶺になりそうだ。なお編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。