ビットコインは2026年8月1日12時JST時点で6万3,012ドル前後、24時間で1.9%安。イーサリアムも1,866ドル前後で同じく1.9%安と足並みを揃えて下げている。材料はハードウェアウォレットColdcardの乱数生成不具合を突いた盗難が7月30日の1,082.65BTCに続き31日にも594BTCが上乗せされ、累計で約1,677BTC(約1億800万ドル)規模に拡大したことだ。一方でAIセクターは212億ドル前後とほぼ横ばいで踏みとどまり、ChainlinkのLINKやVirtuals ProtocolのVIRTUALなど一部銘柄はむしろ逆行高となっている。

いま相場で何が起きているか

2026年8月1日12時JST時点の主要指標は以下の通り。BTCは6万3,012.72ドルで24時間比-1.9%、直近24時間のレンジは6万2,425〜6万4,430ドル。ETHは1,866.56ドルで同じく-1.9%、レンジは1,851〜1,909ドル。仮想通貨市場全体の時価総額は約2.26兆ドル。BTCドミナンスはCoinMarketCap基準で58%台前半と、7月31日時点の56.3%からやや上昇している。アルトコインシーズン指数は集計元により30台後半〜60台前半までばらつくが、複数のソースで「アルトコインシーズンには程遠い」との評価で一致しており、資金がアルトコイン全般へ広く回転している状況ではない。

AIセクターの時価総額は約212億ドルで24時間比+0.1%とほぼ横ばい。個別ではChainlink(LINK)が8.21ドルで+2.1%、Virtuals Protocol(VIRTUAL)が0.5506ドルで+3.2%、ASI Alliance系のFET(Fetch.ai)が0.1416ドルで+1.6%、Bittensor(TAO)が195.83ドルで+0.5%と、BTC・ETHの下げに対して明確に逆行している銘柄が複数ある。

何がこの動きを作ったか

今回の下落の直接材料は、ビットコイン専用ハードウェアウォレットColdcardのファームウェアに存在した乱数生成の不具合だ。2021年3月以降に配布された一部バージョン(4.0.1〜4.2.0)で、本来ハードウェアの真性乱数生成器を使うべきシード生成処理が、予測されやすいソフトウェア疑似乱数生成にフォールバックしていたことが判明した。

Galaxy Researchの分析によれば、協定世界時7月30日01時10分から01時51分の間に1,196件のアドレスから合計1,082.65BTC(約7,020万ドル)が全額引き出された。さらに7月31日には別の25分間で594BTC(約3,800万ドル)が追加で盗まれたことが確認され、累計の被害額は約1億800万ドル規模まで拡大している。製造元のCoinkiteは当初Mk3のみとしていた影響範囲を、後にMk4・Mk5・Coldcard Qの一部ファームウェアにも拡大して警告を出し、Mk3向けに4.2.0以降、Mk4/Mk5向けに5.6.0以降、Coldcard Q向けに1.5.0Q以降の修正ファームウェアを緊急配布した。ただしファームウェアを更新するだけでは既存のシードが安全になるわけではなく、対象ユーザーは新しいシードを生成し直して資金を移動する必要があるとされている。

単独の取引所ハックと異なり、今回は自己管理(セルフカストディ)している個人ユーザーが広く薄く狙われた点が特徴で、「コールドウォレットに移せば安全」という自己管理層の基本前提を揺るがす事案として広く報じられた。Fedの高金利長期化観測やETF資金の細りといった既存の重しに、このセキュリティ不安が重なったことが本日の下落につながっている。

ファンダメンタルをどう見るか

今回の流出総額(約1億800万ドル)は、ビットコインの時価総額(約1.2〜1.3兆ドル)に対して0.01%程度に過ぎず、それ自体がビットコインのネットワークやプロトコルの健全性を損なうものではない。2026年上半期の暗号資産ハック被害総額が11億ドルを超え過去最悪水準だったことを踏まえれば、今回の件は規模としては突出しているわけではないが、自己管理の代名詞であるハードウェアウォレットという領域で起きた点で心理的なインパクトは大きい。

AI銘柄の逆行高についても、セクター全体のファンダメンタルが急改善したわけではない点には注意したい。仮想通貨AIセクターの7月月間の中央値リターンは+3.3%にとどまり、RWA(トークン化資産)セクターの+10.7%に見劣りする状況が続いている。今回LINKやVIRTUALが買われたのも、DTCCのトークン化証券実装やAIエージェント関連のローンチ観測といった個別材料が背景で、セクター一律の資金流入ではない。

資金はどこへ動いているか

ビットコイン現物ETFの7月月間純流入額はわずか約2.05億ドルと、統計開始以来最小の水準にとどまっている。7月29日には4営業日ぶりに3,210万ドルの純流入(IBIT主導)を記録し4日連続の流出streakが止まったものの、月間ベースでは資金流入の勢いは乏しい。イーサリアムETFも直近で流出に転じる場面が見られ、BTC・ETHともに資金の受け皿としての勢いを欠く。

BTCドミナンスが58%台へ上昇している一方でBTC自体の価格も下落しているという組み合わせは、資金がアルトコインからビットコインへきれいに回転しているというより、リスク資産全般からの手仕舞いが先行し、その中でビットコインの下落率が相対的に小さいために結果としてドミナンスが上がっている、という解釈の方が実態に近い。AIセクター(約212億ドル)は資金の明確な受け皿にはなっておらず、限られた銘柄への選別的な買いが目立つに過ぎない。

過去の類似局面との比較

セキュリティ関連のインシデントが相場に与える影響は、事案の性質によって大きく異なる。2025年2月のBybitハック(約15億ドル相当のETH流出、北朝鮮ラザルスグループの関与とされる)では、BTCは9万9,505ドル近辺から9万6,450ドル近辺へ一時-1.92%と急落したが、Bybitが72時間以内に準備金を1対1で回復させたことを示すと、相場は概ね1週間程度で落ち着きを取り戻した。同様に2020年のLedgerの顧客データ流出事件も評判面での打撃はあったものの、BTC価格への構造的な影響は限定的だった。

今回のColdcard問題は、取引所の支払い能力(ソルベンシー)そのものが疑われたBybit型の事案というよりは、評判リスクが中心だったLedger型の事案に近い。過去の類似局面を踏まえれば、ファームウェア更新と資金移動が進むにつれて数日程度で懸念が沈静化する可能性はあるが、これは過去のパターンからの推測であり、追加の脆弱性発覚など新たな悪材料が出れば話は別になる。

注目銘柄と価格水準

BTCは直近24時間で6万2,425〜6万4,430ドルのレンジを形成しており、下は6万2,000ドル台前半、上は6万4,500ドル前後が節目として意識される。この水準を明確に割り込むかどうかが、Coldcard問題の沈静化を市場が織り込めているかの試金石になりそうだ。

LINKは8.21ドルで+2.1%、DTCCのトークン化証券取引での採用実績が引き続き材料視されている。国内でも複数の主要取引所で取り扱いがあり、値動きを追いやすい銘柄の一つだ。VIRTUALは0.5506ドルで+3.2%とAIセクター内で最も強い部類だが、時価総額はまだ3.7億ドル程度と小さく値動きが荒くなりやすい点には注意したい。TAOは195.83ドルで+0.5%、Grayscale・BitwiseによるETF申請の審査が8月に予定されており、決定待ちのなかで底堅さを維持しているが方向感自体は限定的だ。

想定されるシナリオとリスク

上振れシナリオとしては、Coldcard問題がファームウェア更新の浸透とともに数日で沈静化し、8月入り後にETF資金が回復基調へ転じれば、BTCは6万4,500ドル超えを試す展開が考えられる。AIセクターについても、LINK・VIRTUALなど個別材料を持つ銘柄が続けば、セクター全体としての相対的な底堅さが維持される可能性がある。

下振れシナリオとしては、8月は過去に急落局面が見られた月として警戒する向きがあり、Coldcard関連の流出や追加の脆弱性が発覚してセキュリティ不安が長引けば、6万2,000ドル割れが視野に入る可能性もある。ETF流入が7月の過去最小ペースから改善しなければ、上値を試す動きも重くなりやすい。いずれのシナリオも複数の条件が揃って初めて成立するものであり、現時点でどちらか一方に断定できる状況ではない。

まとめ

BTC・ETHは24時間で1.9%安となり、Coldcardの乱数生成不具合を悪用した約1億800万ドル規模の流出拡大とETF資金の細りが相場の重しになっている。一方でAIセクターは212億ドル前後で踏みとどまり、LINK・VIRTUALなど個別材料を持つ銘柄が逆行高となった。過去のBybit・Ledgerの事例を踏まえると、今回のセキュリティ懸念が一過性で終わるか、それとも自己管理そのものへの信頼を損なう構造的な材料になるかが、今後数日の値動きを左右する焦点になりそうだ。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。