2026年7月30日時点、ビットコイン(BTC)は6万3,900ドル前後、イーサリアム(ETH)は1,915ドル前後と、24時間の騰落率だけ見ればどちらもほぼ横ばいだ。だが表面の平穏さとは裏腹に、この24時間で暗号資産デリバティブ市場では2億8,600万ドルが清算されている。値が動かなかったのではなく、上下に振れて往復した結果、ロング・ショート双方が刈られた1日だったというのが実態だ。一方でAI関連銘柄はFET(Artificial Superintelligence Alliance)が+5.3%、NEARが+3.6%と逆行高しており、BTC/ETHのレンジ相場のなかで資金が選別的に動いている。
いま相場で何が起きているか
BTCは24時間で6万3,247〜6万4,660ドルのレンジを往復し、直近では6万3,908ドル・24h+0.18%。ETHは1,850〜1,920ドルの間で推移し、直近1,915ドル・24h+0.24%。どちらも「変動率」だけ見ると小動きだが、値幅は2%前後あり、日中の方向感が定まらないまま推移した。暗号資産全体の時価総額は2兆2,900億ドルで24hほぼ横ばい、ビットコインドミナンスは56.65%。恐怖強欲指数は28(Fear)で、前日29・先週31から緩やかに悪化が続いている。
AI関連銘柄はCoinGeckoのAIカテゴリ集計で時価総額212億ドル前後、24hでは概ね横ばいだが、個別では明暗が分かれた。Bittensor(TAO)は192.57ドル+1.0%、NEAR Protocolは1.65ドル+3.6%、FETは0.1397ドル+5.3%、Chainlink(LINK)は8.37ドル+1.0%、Internet Computer(ICP)は2.07ドル+0.5%、Render(RENDER)は1.40ドル+0.3%、Virtuals Protocol(VIRTUAL)は0.5689ドル+1.2%と、主要どころはいずれもプラス圏で踏みとどまっている。
何がこの動きを作ったか
清算の内訳を見ると、この24時間の総額2億8,600万ドルのうちロングが1億8,600万ドル、ショートが1億ドルとロング優位。うちビットコイン建ては約5,700万ドル(ロング約2,800万ドル・ショート約2,900万ドルとほぼ拮抗)、イーサリアム建ては約5,800万ドルでロング優位だった。最も大きな塊は7月29日水曜のFOMC結果発表直後に発生した1億8,800万ドル(うちロング1億3,000万ドル)で、政策金利発表という既知のイベントであっても、結果が織り込み通りでも値が跳ねれば清算は起きるという典型例になった。
さらに目を引くのが、暗号資産取引所上の株式パーペチュアル(無期限先物)で起きた清算だ。AIメモリー・半導体関連のSanDisk(1,900万ドル)、Micron(1,000万ドル)、SK Hynix(700万ドル)、半導体ETFのSOXL(700万ドル)を合わせて計4,300万ドルがほぼロング方向で清算された。7月に入りAIメモリー株は年初来の急騰の反動で急落しており、その値動きが暗号資産建ての株式パーペチュアルにもそのまま波及した形だ。
ファンダメンタルをどう見るか
ビットコイン現物ETFは7月23日から4営業日連続(23日2億2,518万ドル・24日2億4,008万ドル・27日1,164万ドル・28日4,975万ドル、4日累計5億2,665万ドル規模)の純流出が続いていたが、7月29日にBlackRockのIBITが8,983万ドルの流入を主導し、全体では3,210万ドルの純流入に転じ、流出局面が一旦止まった。イーサリアム現物ETFは7月29日に2,000ETH(約380万ドル)の純流入で、直近7営業日累計では2万277ETH(約3,849万ドル)の流入が積み上がっている。ステーブルコイン時価総額は3,019億ドルで24h-0.2%とほぼ変化なく、資金が市場から大きく引き上げられている様子はない。
DeFiセクターについては「時価総額が24hで約10%減の618億ドル前後」という観測がCoinGecko系の集計サイトから出ているが、上位構成銘柄のSTETH(+0.3%)・HYPE(+2.9%)・WSTETH(+0.2%)・LINK(+1.0%)はいずれも横ばい〜上昇にとどまっており、額面上の下落率と個別銘柄の値動きが噛み合っていない。指数の計算方法や特定銘柄の急変動が平均値を大きく歪めている可能性があり、この数字だけで「DeFiから資金が逃げた」と断定するのは早計だろう。
資金はどこへ動いているか
ビットコインドミナンス56.65%・イーサリアムドミナンス約10%はここ数日からほぼ横ばいで、BTC/ETHから他セクターへの大きな資金移動は見えない。むしろFOMC通過後の様子見ムードのなか、AI銘柄のFET・NEARなど個別材料のある銘柄に選別的な買いが入っている構図だ。ビットコインETFの資金流出が1日反転したこと、イーサリアムETFが7営業日連続で流入を積み上げていることは、機関投資家サイドの資金が急激に引き上げられているわけではないことを示す一方、AIチップ株連動の株式パーペチュアルで清算が続いていることは、AIハードウェアセクターへの警戒がまだ解けていないことの裏返しでもある。
過去の類似局面との比較
FOMCのような既知のイベント通過直後に清算額が跳ねる現象は珍しくない。今回も「据え置き」という結果自体はほぼ織り込み済みだったにもかかわらず、7月29日発表直後だけで1億8,800万ドルが吹き飛んでいる。7月29日のFOMC結果公表時にもBTCは6万4,176ドルから6万3,620ドルへ短時間で1.5%下げており、レバレッジの効いたポジションはイベント通過後も数日にわたって整理され続ける傾向がある。今回の2億8,600万ドルはその「イベント後の余震」に近く、ボラティリティが完全に収まるまでにはあと数日を要する可能性がある。
注目銘柄と価格水準
FET(0.1397ドル)は+5.3%と本日のAI銘柄では値動き最大で、0.14ドル台の維持が目先の焦点。NEAR(1.65ドル)は+3.6%で、1.6〜1.7ドル帯のレンジ上限を試す動き。TAO(192.57ドル)は+1.0%とやや落ち着いた値動きだが、8月に予定されるBittensor関連ETFのSEC審査を控え、200ドル回復の可否が意識されている。ビットコインは6万4,000ドル、イーサリアムは1,900〜1,950ドルのレンジが引き続き節目として意識される水準だ。国内では、FETやRENDERは一部の国内取引所でも取扱いがあるが、TAOやNEARは取引所ごとに取扱いの有無が分かれるため、購入前に確認が必要。
想定されるシナリオとリスク
上振れシナリオとしては、ビットコインETFの純流入が7月29日で終わらず複数日続けば、レンジ上限の6万5,000ドル超えを試す展開もありうる。AI銘柄についても、FET・NEARの資金流入がセクター全体に波及すれば、212億ドル圏で足踏みしているAIカテゴリ時価総額が再拡大に転じる可能性がある。下振れシナリオとしては、AIメモリー・半導体株の下落が続き株式パーペチュアルの清算が繰り返されれば、投資家心理の悪化がAI銘柄本体にも波及しかねない。恐怖強欲指数が28まで低下している局面でもあり、6万3,000ドルを明確に割り込むようだと、レンジ下限を試す展開に注意したい。
まとめ
(1) BTC・ETHは24hの騰落率こそ横ばいだが、2%前後のレンジを往復し2億8,600万ドルが清算される乱高下だった。(2) AI銘柄はFET+5.3%・NEAR+3.6%と逆行高で、BTC/ETHのレンジ相場のなか個別材料への選別買いが観測される。(3) ビットコインETFは4営業日ぶりに純流入へ転じたが、AIチップ株連動の清算はなお続いており、警戒が完全に解けたわけではない。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。
