ビットコインの長期保有者が持つコインの量が、2026年7月21日に過去最高を更新した。流通量の約83%が155日以上動いていない計算になる。同時に米国のビットコイン現物ETFは6営業日連続で純流入し、累計は約9億2,800万ドルに達した。売れる在庫は減り、買い手は毎日入っている。

それでもBTCの価格は7月23日8時(日本時間)時点で6万6,050.70ドル、24時間で1.12%安と1か月高値から反落している。供給が絞られていることと、値が上がることは別の話だという当たり前の事実が、いまの相場ではっきり出ている。そしてこの局面で最も割を食っているのがAI銘柄だ。

いま相場で何が起きているか

BTCは6万6,050.70ドル、24時間の変動率はマイナス1.12%。7月21日には一時6万6,872ドル近辺まで買われて1か月ぶりの高値をつけたが、そこから押し戻された格好だ。ETHは1,937.00ドルで24時間プラス0.9%、時価総額は2,337億ドル、24時間出来高は102億7,200万ドル。7日間の変動率はプラス0.90%とほぼ横ばいで、前週まで続いたETHの独歩高は一服している。

AIセクターの時価総額は222億ドル、24時間でプラス0.6%、出来高は14億2,000万ドル。5月末の266億ドルからは約17%縮小した水準にとどまる。主要銘柄はLINKが8.64ドル(プラス0.2%)、NEARが1.86ドル(プラス3.5%)、TAOが197.69ドル(プラス0.9%)、ICPが2.21ドル(変わらず)、RENDERが1.51ドル(プラス1.7%)。値上がり率上位ではVIRTUALが0.6295ドルでプラス3.9%、VVVが12.20ドルでプラス3.6%、FETが0.1555ドルでプラス1.4%となっている。

数字だけ見ればAI銘柄はプラス圏だが、BTCが1%超下げた日にセクター全体で0.6%しか上がっていないのは、反発として力強いとは言いがたい。TAOは7月22日時点で270ドル前後との観測もあった水準から197ドル台まで水準を切り下げており、セクター内でも銘柄間の格差が続いている。

投資家心理を示すFear & Greed指数は7月22日時点で53(中立)。7月20日の37から改善したものの、強欲圏には遠い。

何がこの動きを作ったか

直接の引き金は原油だ。WTI原油が6月12日以来となる85ドル台に乗せ、インフレ再燃の懸念がリスク資産全般に波及した。金・銀が買われ、暗号資産の内部ではBTCが相対的に選好される一方、アルトコインとステーブルコインからは資金が抜けた。

この資金移動はBTCドミナンスに表れている。市場全体に占めるBTCの時価総額比率は59%まで上昇した。7月時点で56%台だった水準からの切り上がりで、リスク回避局面に典型的な「アルト売り・BTC買い」の構図がそのまま出ている。

もう一方の底流がETFだ。7月21日のBTC現物ETFは2億314万ドルの純流入で6営業日連続のプラス。連続流入としては2026年4月以来の長さになる。内訳はブラックロックのIBITが1億6,389万ドルとカテゴリ全体の8割超を占め、フィデリティのFBTCが2,311万ドルで続いた。BTC現物ETFの総純資産は約809億ドルに達している。ETH・XRP・SOLの現物ファンドも合計4,896万ドルを集め、うちETH ETFは3,747万ドルで3日連続の流入となった。

ただし年初来で見ればBTC現物ETFは依然として48億4,000万ドルの純流出だ。6日で9億ドルを取り戻しても、今年失った資金の2割弱を埋めた段階に過ぎない。

ファンダメンタルをどう見るか

今回の材料で実質的な変化と言えるのは、オンチェーンの供給構造だ。155日以上動いていないコインを持つアドレスの保有量は2026年6月時点で1,664万BTC、流通供給の約83%に相当し、当時のBTC価格6万4,100ドル換算で約1兆700億ドル規模だった。この指標が7月21日にさらに高値を更新した。

積み上がりのペースは2024年初頭から月あたり約20万BTC。弱気相場のあいだに200万枚超が長期保有側に移った計算になる。CryptoQuantのKi Young Ju氏は、この吸収の主体について「Strategyと現物ETFの買い手が、古参クジラの大口売却を吸収した」と指摘している。つまり売り手はいたが、それを継続的に買い切る受け皿ができたということだ。

これは需給の構造変化ではあるが、上昇を保証するものではない。長期保有者比率は「既存保有者の確信度」の代理指標であって、新規需要の指標ではない。板が薄くなれば、買いが来たときの上げ幅は大きくなるが、同時に売りが出たときの下げ幅も大きくなる。ボラティリティの増幅装置と見るのが実務的だ。

AI銘柄側にこの種の構造変化は見当たらない。セクターの時価総額は5月末から17%縮小したままで、供給が絞られている形跡も、恒常的な受け皿となる資金も現時点では確認できない。

資金はどこへ動いているか

整理すると、いまの資金の流れは3層に分かれている。

第一に、マクロから暗号資産への流れ。原油85ドル超によるインフレ懸念で、資金は金・銀とBTCへ向かった。この層ではBTCは「リスク資産」ではなく「インフレヘッジ寄りの資産」として扱われている。

第二に、暗号資産内部の流れ。BTCドミナンス59%が示すとおり、アルトからBTCへの退避が起きている。ステーブルコインからも資金が抜けており、リスクを取りに行く姿勢は後退している。

第三に、機関の流れ。ETFは6日連続で買い越し、BTCが2億314万ドル、ETH・XRP・SOL合計で4,896万ドル。ここではBTCがETH・アルトの4倍以上を集めており、機関の選好もBTCに寄っている。

3層すべてでBTCが優位、AI銘柄は3層いずれの受け皿にもなっていない。前日まで観測されていたETHの相対優位も、7日変動率0.90%と横ばいに落ち着き、いったん途切れた形だ。

7月のアンロック総額は約19億8,800万ドルで、WLDが5,782万ドル(流通比4.04%)、TAOが2,242万ドル(同1.16%)、NEARが1,014万ドル(同0.43%)と、AI関連銘柄にも供給圧が残る。BTC側の供給が絞られる一方でAI銘柄側は新規供給が出続けるという、需給の非対称も効いている。

過去の類似局面との比較

長期保有者の供給が過去最高を更新した局面は、これまでも価格の直接的な上昇材料にはなってこなかった。2024年以降の積み上がり局面では、指標が高値を更新している最中もBTCは長期のレンジ内で推移している。効いてくるのは需要側のイベントが重なったときであり、供給指標が単独で上げを作ったケースは確認できない。

ドミナンス上昇局面でのAI銘柄の挙動にも再現性がある。7月に入ってからの本サイトの観測では、BTCが反発した日にAI銘柄が同調しない場面が繰り返されてきた。7月20日前後にNEARが週16%高、TAOが16.8%高となる局面はあったが、それも踏み上げ主導の側面が強く、数日で相対優位を失っている。今回のNEARプラス3.5%も、同じパターンの初動である可能性は割り引いて見る必要がある。

原油主導のリスクオフについては、7月中旬に原油91ドル台をつけた局面でAI銘柄が二重の売り圧に晒された経緯がある。そのときはアンロックと重なって下げが増幅された。今回は原油85ドルとやや低い水準で、アンロックの主要日程も一部消化済みという違いはある。

注目銘柄と価格水準

BTCの上値で最も意識されるのは、短期保有者の実現価格である6万9,340ドルだ。アナリストのAli Martinez氏は、昨年11月以降のすべての戻りがこの水準で跳ね返されてきたと指摘している。155日未満の保有者の平均取得価格にあたり、ここを超えると含み損の解消売りが一巡する構造になっている。直近では6万6,000〜6万7,000ドルが上値の重い帯、下は50日EMAの6万5,079ドルが目先の支えだ。

ETHは1,937ドル。時価総額2,337億ドル、24時間出来高102億ドルと流動性は厚い。ETF流入が3日連続で続いており、BTC対比の相対優位が戻るかが焦点になる。

AI銘柄では、NEARが1.86ドルでセクター内の値上がり率上位。NEAR Intentsの累計取引高が220億ドルを超えたことが継続的な話題になっている。TAOは197.69ドルで、8月に予定される現物ETFのSEC判断がセクター唯一の日程材料として残る。VIRTUALは0.6295ドルでプラス3.9%と当日の上昇率首位だが、時価総額は4億ドル規模で値動きが荒い。RENDERは1.51ドル、FETは0.1555ドル、LINKは8.64ドル、ICPは2.21ドルとなっている。国内取引所ではNEAR・RENDER・LINKなどに取扱があるが、TAOやVIRTUALは未上場の取引所が多い。

想定されるシナリオとリスク

上方シナリオは、原油が85ドル割れに反落してインフレ懸念が後退し、ETFの連続流入が7日目以降も続く展開だ。この場合BTCは6万7,000ドル帯を上抜けて6万9,340ドルを試す動きになりやすく、ドミナンスが頭打ちになればAI銘柄の戻りが遅れて始まる。供給が絞られている分、需要が乗ったときの値幅は出やすい。

下方シナリオは、原油が高止まりして50日EMAの6万5,079ドルを明確に割り込む展開だ。ドミナンス59%からさらに上昇する場合、アルト側の下落率はBTCを上回るのが通例で、AIセクターは222億ドルから一段の縮小を強いられる。ETFが7営業日目に流出へ反転すれば、6日間の流入が短期の戻り待ち資金だったことになり、下げの確認材料となる。

リスク要因として、7月28〜29日のFOMCが控える。据え置きが8割超で織り込まれており、焦点は声明と会見のトーンだ。原油高でインフレ再燃が意識されている局面では、タカ派寄りの発信がリスク資産の重石になる余地がある。加えて7月29日にMSFT・META、7月30日にAAPL・AMZNの決算があり、AI株経由でAI銘柄に波及する経路も残っている。

まとめ

トレーダーが持ち帰るべき点は3つある。

第一に、BTCの供給は構造的に絞られている。長期保有者の保有量は7月21日に過去最高を更新し、流通の約83%が動かない状態にある。ただしこれは上昇の条件であって原因ではない。需要が来たときの値幅を増幅する装置と捉えるべきだ。

第二に、当日の値決めを握っているのはマクロだ。原油85ドル超がBTCを1か月高値から押し戻し、ドミナンスを59%へ押し上げた。ETFの6日連続流入・累計9億2,800万ドルは底流としては効いているが、日次の値動きを支配してはいない。

第三に、AI銘柄はこの資金の流れのどの層にも乗れていない。セクター時価総額222億ドルは5月末比17%減のままで、7月のアンロック19億8,800万ドルという供給圧も残る。反転を確認するならBTCドミナンスの頭打ちが先で、個別銘柄の材料はその後という順序になる。

なお編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。