Grayscale Investmentsは2026年8月5日、分散型AI関連の複数資産ファンドを含む四半期リバランスを発表した。効力発生日は8月3日の取引終了時点で、注目すべきはDecentralized AI Fundの構成比の変化だ。NEAR Protocol(NEAR)が31.35%で首位に復帰し、直前の四半期で43.06%まで積み増されていたBittensor(TAO)は29.15%へ縮小、Render(RENDER)21.59%・Filecoin(FIL)17.91%が続く。一方で2026年8月8日午前8時JST時点のNEAR現物価格は1.59ドル前後で24hで-4.2%安と、機関の配分比率の上昇とは逆方向に動いている。

いま相場で何が起きているか

2026年8月8日午前8時JST時点、BTCは64,718ドル前後(24hで+0.54%、当日レンジ64,124〜65,312ドル)、ETHは1,913ドル前後(+0.5%)で、いずれも小幅高で推移している。CoinGeckoのAIカテゴリ時価総額は約203億ドルで、前日(8月7日時点で約207〜208億ドル)からわずかに縮小した。個別ではNEARが1.59ドル(-4.2%、時価総額約20.7億ドル)、TAOが193.61ドル(+0.6%、時価総額約18.6億ドル)、RENDERが1.31ドル(-2.5%、時価総額約6.8億ドル)と明暗が分かれている。Fear & Greed指数は39(Fear)、BTCドミナンスは59.0%まで上昇しており、市場全体としてはリスクオフ寄りの地合いが続く。

何がこの動きを作ったか

材料はGrayscaleの分散型AIファンドの四半期リバランスだ。同ファンドはTAO・NEAR・RENDER・FIL・GRT等で構成される機関投資家向け商品で、四半期ごとに構成比を機械的に見直す仕組みを持つ。今回の見直しでNEARの保有割合が最大の31.35%へ回復し、直前四半期(4月)に単一資産としてはファンド史上最大規模とされる引き上げで43.06%まで積み増されていたTAOは29.15%まで縮小した。RENDERとFILの比率にも変化があったが、公表資料からは両者への具体的な悪材料・好材料は確認できていない。あくまで四半期ごとの機械的な配分ルールに沿った調整という位置づけが妥当だ。重要なのは、これは特定銘柄への強気・弱気の裁量判断というより、時価総額や設計上の重み付けに基づく定期メンテナンスである点だ。

資金はどこへ動いているか

分散型AIファンド自体は機関投資家向けの限定商品であり、資金規模はAIセクター全体(約203億ドル)からみれば小さい。とはいえ、機関の目線がどこに向いているかを示す指標として市場は注目している。並行して、米国のBTC現物ETFは8月に入り資金流入が継続しており、8月3日170.1万ドル、4日211.49万ドル、5日244.4万ドル、6日137.6万ドルと4営業日連続の純流入を記録、直近3営業日累計は約6.26億ドルに達した。うちIBIT(iShares Bitcoin Trust)が約4.78億ドルと大半を吸収しており、BTCへの資金選好が継続している構図だ。AIセクター向けの資金はこうしたBTC本流とは別軸で、TAO現物ETF(GrayscaleのGTAOおよびBitwiseのTAO Strategy ETF)の承認可否という単発イベントを控えたポジション調整の色合いが強い。

過去の類似局面との比較

GrayscaleがTAOの比率を43.06%まで引き上げたのは2026年4月7日、奇しくもBittensorの主要サブネット運営者Covenant AIが co-founderとの対立を理由にネットワークを離脱すると表明する直前だった。Covenant AIは保有していた約37,000TAO(当時約1,020万ドル相当)を売却し、TAO価格は12時間以内に20%超(報道によっては28%まで)急落、時価総額ベースで一時約9億ドルが失われた。それでもBittensorのステーキング比率は約70%を維持し、コミュニティ主導で主要サブネット(SN3・SN39・SN81)の運営が代替担当者なしで復旧したことが「非中央集権の耐障害性」の実証例として評価された経緯がある。Grayscaleが危機直前にTAOへ大きく傾けた判断は結果的に底値圏での積み増しに近い形となったが、今回8月のリバランスではその積み増し分の多くを吐き出し、NEARを再び首位に戻している。同じ資産クラス内でも、危機時の逆張り的な積み増しと、平時への回帰という異なる局面が数か月内に連続して起きている点は、機関資金であっても短期の配分変更が起こりうることを示す事例といえる。

注目銘柄と価格水準

NEARは1.59ドル前後(24hで-4.2%)で、直近安値圏に接近している。ファンド内配分の首位復帰という好材料が出た当日に価格が下落している点は、機関の四半期リバランスが必ずしも短期の現物需給に直結しないことを示す。TAOは193.61ドル前後(+0.6%)で、心理的な節目である200ドルの手前で推移しており、8月中に見込まれるTAO現物ETFの審査結果が上抜けの起点になるかが焦点だ。RENDERは1.31ドル前後(-2.5%)とAIセクターの中でも弱含みで、Grayscaleファンドでの構成比21.59%という位置づけほどには価格が評価されていない。いずれも国内の主要取引所では取扱いが限定的な銘柄が多く、購入を検討する場合は各取引所の対応状況を個別に確認する必要がある。

想定されるシナリオとリスク

上振れシナリオとしては、8月中にTAO現物ETFが承認されれば、Grayscaleが直近縮小させた29.15%という配分が再び見直され、AIセクター全体への新規資金流入のきっかけになる可能性がある。逆に却下ないし継続審査となれば、期待先行で積み上がったポジションの巻き戻しが起き、TAO・NEARともに戻り待ちの展開が続くリスクがある。NEARについては、ファンド内配分の上昇という機関側のポジティブな評価と、現物価格の下落という短期需給が乖離したまま推移する可能性があり、この乖離がどちらに収斂するかを見極める必要がある。いずれのシナリオも確定した情報ではなく、条件が満たされた場合の一つの可能性として捉えるべきだ。

まとめ

Grayscaleの分散型AIファンドは8月3日付のリバランスでNEARを31.35%で首位に戻し、4月に43.06%まで積み増されていたTAOは29.15%へ縮小した。一方でNEAR現物は24hで-4.2%と配分比率の上昇に価格が追随していない。4月のCovenant AI離脱危機時にTAOを積み増した機関の判断が結果的に功を奏した経緯を踏まえると、今回の巻き戻しも一時的な調整なのか、それとも次のトレンド転換の予兆なのかは、8月中に見込まれるTAO現物ETFの審査結果を待つ必要がある。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。