米国の暗号資産市場構造法案「CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act)」の年内成立確率が、予測市場Polymarketで2月のピーク82%から直近28%へ急落した。上院は8月7日からの休会前に本会議採決へ持ち込めない見通しとなり、規制の空白が長引く公算が強まっている。ビットコイン現物ETFは週間6,153万ドルの純流出で3週連続の流入記録が止まり、資金はイーサリアムETF(週間2,742万ドル流入・4週連続プラス)へシフト。AI関連銘柄はBittensor(TAO)が3日連続安となるなど、規制不透明感の直撃を受けやすい銘柄から売られている。
いま相場で何が起きているか
2026年8月3日夜〜4日昼(JST)時点で、ビットコイン(BTC)は6万2,600〜6万4,000ドルのレンジで推移し、直近終値は6万3,500ドル前後。イーサリアム(ETH)は1,850ドル前後で伸び悩んでいる。仮想通貨全体の時価総額は2.25兆ドル規模、恐怖強欲指数は27〜28(Fear)で高止まりが続く。AIセクターの合計時価総額は約212億ドル前後で、5月末の直近ピーク(266億ドル規模)から2割超縮小した状態が続いている。個別ではBittensor(TAO)が8月3日時点で188.01ドル・24時間-2.18%と3営業日連続の下落となった。Fetch.ai(FET)は週間-8.2%とAI銘柄の中でも下げがきつく、7月末時点で0.14〜0.16ドル圏まで値を落としている。AI連動トークン8銘柄のうち7銘柄が日足・週足ともにマイナス圏という調査もあり、TAO以外の選別売りが続く展開だ。
何がこの動きを作ったか
材料は、米国の暗号資産市場構造を包括的に定める「CLARITY法案」の失速だ。予測市場Polymarketでは同法案が2026年中に成立する確率が2月時点の82%から直近28%まで急落、調査会社Galaxy Researchも成立確率を30%まで引き下げた。上院共和党のジョン・スーン院内総務は、8月7日から始まる夏季休会前に本会議での審議・修正・討論終結(クローチャー)を完了させる時間がないと認めており、事実上今会期での採決は絶望的との見方が広がっている。共和党だけでは議席が足りず、フィリバスターを回避するには民主党から約10票の賛成が必要とされる。法案自体はすでに最終版のテキストが公開されており、内容面での対立というより日程上の制約が採決見送りの主因とされる。
資金はどこへ動いているか
規制不透明感の長期化を受け、資金フローにも変化が出ている。7月27〜31日の週、米国のビットコイン現物ETFは6,153万ドルの純流出となり、3週連続だった流入記録が途切れた。フィデリティのFBTCが8,519万ドル、グレースケールのGBTCが5,263万ドルの資金を吐き出す一方、ブラックロックのIBITだけは週間8億6,902万ドルの純流入を確保し下支えした。対照的に、イーサリアム現物ETFは週間2,742万ドルの純流入で4週連続のプラスを維持、ブラックロックのETHAが3,662万ドルを主導した。BTCからETHへの資金ローテーションが継続する一方、AIセクターには明確な受け皿となる新規資金の流入は確認できていない。年初来のビットコインETF累計フローはなお約52.9億ドルのマイナス圏にとどまる。
過去の類似局面との比較
米国の暗号資産関連法案が土壇場で先送りされた例は今回が初めてではない。2024年には下院を通過した市場構造法案(FIT21)が上院で店ざらしとなり、翌会期に仕切り直しとなった経緯がある。ステーブルコイン規制のGENIUS法案も、成立までの過程で予測市場のオッズが乱高下する場面が何度もあった。共通するのは、市場が「法案の成立/不成立」そのものよりも「不確実性が続くこと」を嫌気しやすいという点だ。今回もCLARITY法案の内容自体への反対が強いわけではなく、単純に審議時間が枯渇したことが要因であり、9月以降の会期で再浮上する可能性は残る。ただし予算折衝や中間選挙を控えた政治日程を踏まえると、審議時間の確保は年内を通じて楽観できない、というのが大方の見立てだ。
注目銘柄と価格水準
ビットコインは6万2,500ドル近辺が直近の下値の目安として意識されており、週内にこの水準を守れるかが焦点。上値は6万4,000〜6万5,000ドル帯が重い。イーサリアムは1,830〜1,920ドルのレンジ推移が続いており、ETF資金の継続的な流入が上値追いの手掛かりになるかが注目される。AI銘柄ではTAOが166〜216ドルのレンジの下限に近づいており、8月中に見込まれるGrayscale(GTAO)・Bitwiseの現物ETF審査結果が反発の材料になり得る一方、規制全体の後退ムードが逆風となるリスクもある。Fetch.ai(FET)は週間-8.2%と主要AI銘柄の中で最も弱く、0.14〜0.16ドル圏でのもみ合いが続いており、明確な反発材料が出るまでは戻り待ちの売りが優勢とみられる。Render(RENDER)はPolygon上の旧トークン(RNDR)が不正なコントラクトアクセスを受けたことを受け、Solanaネイティブの新トークンへの移行を進めている最中で、値動きよりもまず移行の完了が焦点になっている。Internet Computer(ICP)は7月中2.15〜2.39ドルのレンジで推移し直近は2.19ドル前後、日次処理トランザクション数が7月に過去最高の1億3,300万件に達するなどネットワーク活動自体は堅調で、AI・DeFi関連の新機能実装も進む。国内取引所ではBTC・ETHはほぼ全社で取扱いがあるが、TAO・FET・RENDER・ICPなど個別のAI銘柄は取扱いが限られるため、海外取引所での値動きが先行しやすい点には留意したい。
想定されるシナリオとリスク
CLARITY法案が9月以降の会期で再浮上し、上院で前進する動きが確認されれば、規制不透明感の後退を材料にAIセクターを含むアルトコイン全般に見直し買いが入る展開が想定される。逆に、予算折衝や中間選挙日程を理由に審議がさらに先送りされれば、機関投資家のリスク回避姿勢が続き、ビットコインETFからの流出とAI銘柄を中心とした選別売りが長引くシナリオも考えられる。いずれの場合も、TAOの現物ETF審査結果(8月中見込み)という別の規制イベントが重なっているため、CLARITY法案の動向とTAO個別のニュースを混同せず、それぞれの結果を分けて見極める必要がある。
まとめ
CLARITY法案の年内成立確率はPolymarketベースで82%から28%へ急落し、上院は8月7日の休会前の採決を事実上断念した。ビットコインETFは週6,153万ドルの流出で3週連続の流入記録が止まり、資金はイーサリアムETF(週2,742万ドル流入)へ回転している一方、TAOをはじめとするAI銘柄は3日連続安となるなど規制不透明感の直撃を受けやすい。トレーダーが持ち帰るべき点は、(1)法案の帰趨自体より審議日程の逼迫が今回の売り材料であること、(2)BTCからETHへの資金ローテーションは継続中であること、(3)TAOの現物ETF審査という別イベントが8月中に控えており材料を混同しないこと、の3点だ。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。
