米ETH現物ETFの資金フローが明確に反転した。2026年8月3日までの7日間で純流出額は3,040万ドル(同日単日では1,190万〜1,230万ドル)に達し、7月に9カ月ぶりの高水準となる月間3.65億ドルの流入を記録した勢いは完全に失速した。対照的に米BTC現物ETFは5月11日から続いた8週連続の流出局面(累計82.6億ドル)を7月中旬に脱すると、8月に入ってからは1営業日も純流出を記録しておらず、週間ベースで3.81億ドルの流入を積み上げている。資金がETHからBTCへ回帰する動きが数字として表れており、AIセクター全体(約201.6億ドル、24時間-0.98%)はその流れの外に置かれたままだ。
いま相場で何が起きているか
2026年8月6日12時JST時点、BTCは6万4,507.96ドル(24時間+0.3%)、時価総額は1兆2,940億ドル。ETHは1,897.13ドル(同+1.3%)、時価総額2,289億6,000万ドル。BTCドミナンスは56.6%、アルトコインシーズン指数は37で「アルトシーズンにはほど遠い」水準にとどまる。AIセクター時価総額は約201億6,000万ドルで24時間-0.98%とほぼ横ばい。恐怖強欲指数は25(極度の恐怖)で、8月に入ってから20台後半〜半ばの弱含みが続いている。AI関連銘柄ではChainlink(LINK)が8.34ドル・月間+14.8%と独歩高な一方、TAOは199ドル前後・VIRTUALは0.56ドル前後で月間騰落率は一桁にとどまる。
何がこの動きを作ったか
ETH ETFの失速は7月29日のFOMC(連邦公開市場委員会)が引き金になったとみられる。会合はフェデラルファンド金利を3.50〜3.75%で5会合連続据え置く一方、投票は9対3の分裂に終わった。反対票を投じたクリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁の3名はいずれも「0.25%の利上げが望ましい」として反対しており、地区連銀総裁3名が利上げ方向で足並みを揃えて反対したのは2016年9月以来という。この結果、市場が織り込む9月利上げ確率は64%まで浮上し、リスク性資産全般の資金コストに対する警戒が強まった。ETH ETFの週間流入は7月最終週に1億390万ドルから2,742万ドルへ74%減少し、8月3日には単日1,190万ドルの純流出(グレイスケールETHEとブラックロックETHAが主導、ステーキング型のETHBのみ資金流入)を記録するに至った。
一方のBTC ETFは8月5日単日で2億1,149万ドルの純流入(7ファンド中5ファンドがプラス、流出ゼロ)を記録し、ブラックロックのIBITが1億7,035万ドルと8割超を主導した。8月に入ってからBTC ETFが純流出を記録した日は一度もなく、2024年1月の上場以来の累計流入額は500億ドルを突破している。BTCが「相対的に安全」と見なされ、ETHは金利敏感資産としてより強く売られたという構図が透ける。
ファンダメンタルをどう見るか
この資金の分岐は一過性の連想売買というより、金利観測の変化に対する資産ごとの感応度の違いを反映している可能性が高い。ETHはステーキング利回りを内包する分、金利上昇観測局面では相対的な魅力が薄れやすく、実際にステーキング非対応のETHEやETHAから資金が抜け、ステーキング対応のETHBだけが資金を集めている点は象徴的だ。BTC側は8週連続流出(合計82.6億ドル)というかなり深い調整を経た後の資金回帰であり、CLARITY法(米クリプト市場構造法案)成立への期待も下支え材料として指摘されている。ただしCLARITY法の年内成立確率はPolymarketで直近27%まで低下しており(本紙既報)、規制期待だけでは説明しきれない部分もある。AIセクターがこの資金回帰の恩恵をほとんど受けていない点も見逃せない。NVIDIA株は8月5日終値211.94ドルで日足RSIは56.93と中立圏だが、著名投資家マイケル・バリー氏が指摘したとされる「2,500億ドル規模のAI需要リスク」が8月26日の決算発表を前にした重荷として意識されており、AI株への警戒がAIセクター全体の伸び悩みに波及している可能性がある。
資金はどこへ動いているか
セクター別では、BTC>ETH>AIの順で資金選好が明確だ。BTCドミナンス56.6%は直近数週間でのレンジ内にあり、AIセクターは201億6,000万ドルで7月からほぼ横ばいの推移が続く。LINKだけが月間+14.8%と例外的に資金を集めているが、これはAave・Glacis Labs・Lombard Financeなど複数連携先の統合拡大とCCIP経由の決済額拡大(四半期で70億ドル超)という個別材料によるところが大きく、セクター全体の地合い改善を示すものではない。デリバティブ市場では8月のアノマリー(過去4年連続でBTCの月間中央値リターンがマイナス)への警戒からDeribitの6万ドルプットの建玉が積み上がっており、BTC ETFへの資金回帰と裏腹に、オプション市場は下振れへの保険需要を高めている。
過去の類似局面との比較
BTC ETFが長期の流出局面を脱した直後に資金が急回復した例は今回が初めてではない。2026年前半にも同様のパターンで流入が数週間続いた後、失速して再び流出局面に戻った経緯があり、「1週間の流入トレンドの転換」を意味しない点は市場参加者の間でも指摘されている。ETH側についても、7月に9カ月ぶりの月間流入を記録した直後に急減速するのは、6月・7月に見られた資金フローの振れ幅の大きさと整合的で、FOMCなどのイベント通過後に資金の巻き戻しが起きるパターンが繰り返されている。
注目銘柄と価格水準
BTCは6万4,000〜6万5,000ドルのレンジを維持しており、ETF資金流入が続く限り6万5,000ドル台の上値追いが視野に入るが、8月アノマリーとプット買いの積み上がりを踏まえると6万3,000ドル割れでの調整リスクも残る。ETHは1,850〜1,900ドルで方向感を欠いており、ETF流出が続けば1,850ドル割れ、逆に流出が一巡すれば1,950ドル手前の直近高値が意識される。AI関連ではLINKが8.34ドルで年初来高値圏を維持できるかが焦点、TAOは8月中に見込まれるGrayscale/BitwiseのETF審査結果を控えて199ドル前後で推移している。いずれも国内取引所での取り扱いはbitFlyer・Coincheck等で確認できる銘柄が中心で、TAOなど一部のAI銘柄は国内未上場のため海外取引所を利用する場合はカントリーリスク・規制リスクを踏まえた自己判断が必要になる。
想定されるシナリオとリスク
強気シナリオは、BTC ETFへの資金流入が9月まで持続し、CLARITY法の議会通過期待が再燃した場合で、この場合はドミナンス上昇を伴いながらBTCが6万6,000ドル台の年初来高値を試す展開が想定される。弱気シナリオは、9月FOMCで実際に利上げが決定される、またはNVIDIA決算(8月26日)でAI需要への懸念が具体化した場合で、この場合はBTC・ETHともに調整が入りやすく、AIセクターは二重の逆風(金利敏感資産としての重さとAI株連想売り)にさらされる可能性がある。いずれのシナリオも現時点で確定的な材料はなく、次のFOMC(9月)とNVIDIA決算が分岐点になる。
まとめ
ETH ETFの週間流出転落とBTC ETFのゼロ流出日継続という対照的な資金フローは、FOMCの分裂的な利上げ観測を境に生まれた資産選好の変化を映している。AIセクターはこの資金回帰の外側にあり、LINKのような個別材料を除けば横ばいが続く。トレーダーとしては、(1)9月利上げ確率(現在64%)の変化、(2)BTC ETFの流入継続日数、(3)NVIDIA決算(8/26)前後のAI株の値動き、の3点を追うのが実務的だろう。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。
