ビットコイン(BTC)は2026年7月31日時点で6万5,023.82ドル(24時間+2.09%)と底堅い一方、仮想通貨AIセクターは7月の月間中央値リターンが+3.3%にとどまり、トークン化資産(RWA)セクターの+10.7%に大きく水をあけられた。機関マネーがビットコイン・ステーブルコイン・RWAへ向かい、投機性の強いAIトークンから資金を引き揚げつつある構図が、複数の指標で裏付けられ始めている。

いま相場で何が起きているか

2026年7月31日時点でBTCは6万5,023.82ドル(24時間+2.09%、出来高266億ドル、時価総額1.3兆ドル)、ETHは1,927.90ドル(24時間+1.23%、出来高82.4億ドル、時価総額2,327億ドル)。BTCドミナンスは同日のCoinMarketCapデータで56.3%、アルトコインシーズン指数は58で、6月のピーク64から低下したものの「アルトシーズン」の目安である75にはなお届いていない。

仮想通貨AIセクターの時価総額は212億ドル(24時間+0.5%)。主要銘柄ではBittensor(TAO)が193.62ドル(24時間+0.5%、週間-1.0%)で唯一プラス圏を保つ一方、Fetch.ai(FET)とNear Protocol(NEAR)は週内でトレンドラインを割り込み、技術的に弱い形になっている。DeFiセクターは対照的に24時間+2.6%(時価総額627.4億ドル)まで戻し、Uniswap(UNI)+12.14%、Injective(INJ)+10.13%が牽引した。

何がこの動きを作ったか

7月の月間セクター別中央値リターンを比較すると、序列は明確だ。RWAが+10.7%で首位、レイヤー2が+7.6%、DeFiが+6.3%と続き、AIは+3.3%でようやくプラス圏、ミームコインは-3.1%、GameFiは-3.5%、DePINは-6.6%とマイナスに沈んだ銘柄群も目立つ。

AIトークンが伸び悩んだ直接の要因として指摘されているのが、NVIDIAのBlackwell世代GPUによる推論コストの急低下だ。トークン生成コストが従来比で約35分の1(1トークンあたり4.20円相当)まで下がったことで、分散型コンピュート網が売りにしていた「安価な計算資源」という価値提案そのものが目減りし、供給過剰による価格下押し圧力が構造的にかかっている。加えて2025年の急騰局面からの反動による機関投資家の利益確定、「ストーリー先行で実需・収益の裏付けが乏しい」という評価の広がりも重なった。

一方のRWAセクターは、トークン化された国債・信用・ゴールドなどオンチェーン時価総額が7月24日時点で322億ドル、月初比+12.3%まで拡大。BlackRockのBUIDL(約25億ドル)、Figure Heloc(197.3億ドル)、Stellar(69.3億ドル)、Chainlink関連(59.5億ドル)などが上位を構成し、Ondo Financeのトークン化株式プラットフォーム「Ondo Global Markets」はローンチから8か月でTVL10億ドルを突破、2026年年初来でTVLを倍増させている。

ファンダメンタルをどう見るか

この資金シフトを一過性の連想ではなく実質的な変化と見るべきか、判断材料は分かれる。RWA側は国債・信用・株式のトークン化という具体的な裏付け資産があり、Ondoの数字のようにTVLの増加という定量指標で裏付けが取れる点で、AIトークンの「ストーリー先行」批判とは対照的だ。ただしRWAセクターの上昇についても、値上がり銘柄と値下がり銘柄の比率がおよそ9対5にとどまるとの分析があり、セクター全体への資金流入というより一部の大型銘柄への集中的な資金流入という評価がある。

AI側も全滅ではない。TAOは8月に予定されるSEC ETF審査という具体的なカタリストを控え、週間-1.0%と他のAI銘柄ほど崩れていない。ただしこれは「独歩高」ではなく「下げ渋り」に近く、ファンダメンタルの改善というよりイベント期待による下支えという性格が強い。

資金はどこへ動いているか

ビットコイン現物ETFは7月30日に2億3,300万ドルの純流入を記録し、4営業日続いた流出局面が一旦止まった。内訳はBlackRockのIBITが1億8,300万ドル(全体の78.7%)、BitwiseのBITBが2,070万ドル、FidelityのFBTCが1,550万ドルなどで、この日は流出を記録したファンドがゼロだった。ただし7月月間の純流入額はわずか2億500万ドルと過去最小を記録しており、2026年通年では累計約48億4,000万ドルの純流出が残る。対照的にイーサリアム現物ETFは同時期に流出へ転じており、BTCとETHで資金の向かう先が分岐している。

こうしたETFの資金基盤の弱さと、RWA・DeFiへの選好が重なった結果、AIセクターは「資金の受け皿」としての地位を一時的に譲っている格好だ。BTCドミナンス56.3%・アルトコインシーズン指数58という水準は、資金がアルトコイン全般に広く向かっているわけではなく、BTCとRWAなど特定のテーマに選別的に向かっていることを示唆する。

過去の類似局面との比較

仮想通貨AIセクターは2026年に入ってから、5月末の時価総額ピーク(約260億ドル超)から一貫して縮小基調にある。7月中も本シリーズで繰り返し報じてきた通り、AI株安・半導体株安・FOMC前後の様子見など、外部要因のたびにAI銘柄は「逆行高」と「連れ安」を交互に繰り返してきたが、いずれも数日で失速するパターンが多かった。今回のRWAへのローテーションも、過去のDeFi急騰(24時間+9.8%を記録した局面)やAIチップ株安での連想逆行高と同様、特定セクターへの一時的な資金集中という点で構造は共通している。過去の逆行高がいずれも一過性に終わっている点を踏まえると、今回のRWA優位も持続性を検証する必要がある局面だ。

注目銘柄と価格水準

Bittensor(TAO): 193.62ドル(24時間+0.5%、週間-1.0%)。8月のETF審査を控え相対的な下げ渋りが続くが、年初来高値圏の250ドル近辺からは大きく水準を切り下げている。次の意識水準は心理的節目の200ドル回復と、下値では直近安値圏の184〜192ドルの下値支持帯。

Ondo(ONDO): RWAセクターの代表銘柄として、Ondo Global MarketsのTVL10億ドル突破という具体的な材料を持つ。RWAセクター全体の時価総額322億ドル拡大の中核を担っており、セクター物色が続く場合は資金流入の受け皿になりやすい位置にある。

Fetch.ai(FET)・Near Protocol(NEAR): ともに週内でトレンドラインを割り込み、AI銘柄群の中で相対的に弱い技術的形状。反発には出来高を伴った戻りが条件となる。

国内取引所での取扱いは銘柄によって差があり、購入検討時は各取引所の取扱銘柄一覧での確認が必要になる。

想定されるシナリオとリスク

上振れシナリオとしては、8月のTAO ETF審査で好材料が出れば、AIセクター全体への物色回帰のきっかけになり得る。また、RWAセクターへの資金流入がOndoなど個別銘柄にとどまらずセクター全体に広がれば、BTC・RWA連動の相場地合いがより明確になる可能性がある。

下振れシナリオとしては、BTC現物ETFの月間流入額が過去最小水準にとどまっている点が示す通り、資金基盤そのものが薄く、この先ETFに再び流出が続けば、RWA・DeFiを含めた全セクターが調整を強いられる可能性がある。また、AI銘柄がBlackwell世代GPUによる構造的なコスト低下という逆風を抱えたままである以上、一時的な戻りがあっても中期的な資金流入回復にはつながりにくいとの見方もできる。いずれのシナリオも現時点で確定した方向感ではなく、今後のETFフローとセクター別リターンの推移を注視する必要がある。

まとめ

7月の仮想通貨市場は、AIセクターの月間+3.3%に対しRWAが+10.7%という明確な差がつき、機関マネーの選好がビットコイン・ステーブルコイン・実物資産トークンへ向かっていることが数字で確認できる。BTC現物ETFの資金流入は再開したものの月間ベースでは過去最小水準にとどまり、資金基盤自体が脆弱な点には注意が必要だ。TAOのETF審査など8月に控えるイベント次第でAIセクターへの資金回帰があり得る一方、RWAの上昇も一部銘柄への集中という側面があり、どちらのセクターも持続性の検証はこれからだ。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。