FRBは2026年7月29日午後2時(米東部時間、日本時間30日午前3時)、政策金利を3.50〜3.75%に5会合連続で据え置いた。市場が織り込んでいた「据え置き」自体はサプライズではなかったが、投票は9対3の僅差で、3人の理事が0.25%の利上げを主張する異例のタカ派反対となった。この結果を受けてビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)は発表直後に下落し、24時間で4.1億ドル相当の清算が発生した一方、AIセクターは+1.2%と逆行高になるという、同じ「AI」でも銘柄群によって明暗が分かれる展開になった。
いま相場で何が起きているか
FOMC発表時点(14時00分EDT)でBTCは6万4,176ドル、ETHは1,913ドルで取引されていた。発表後、BTCは6万3,620ドルまで1.5%下落(24時間では-0.6%、週間では約-4.61%)、ETHは1,882ドルまで1.63%下落(24時間では-1.9%、日中値幅は1,882〜1,930ドル)した。BTCの時価総額は約1兆2,900億ドル、ETHは約2,310億ドルで、いずれも過去最高値(BTC12万6,198ドル、ETH4,953ドル)から約半値圏にとどまっている。一方でCoinGeckoのAIカテゴリーは合計時価総額約210億ドルで24時間+1.2%、出来高は約17億ドルとなり、BTC・ETH安の裏で個別のAI銘柄には買いが入った。恐怖強欲指数はFOMC発表前の時点で28の「恐怖」圏にとどまっており、発表後の下落でこのレンジからさらに悪化する可能性がある局面だった。
何がこの動きを作ったか
下落の直接の引き金はFOMCの投票内訳そのものだ。声明文は「経済活動は堅調に拡大」「インフレは目標の2%を上回る水準が続く」とし、据え置きの理由を説明したが、3人の理事(ハマック氏・カシュカリ氏・ローガン氏)が利上げを主張したことで、次回9月会合以降に利上げ再開の可能性が意識された。市場は事前に「据え置きなら安心材料」という前提でポジションを積んでいたため、タカ派色の強い投票結果はロング勢の想定外となり、発表後24時間で総額4.1億ドル(うちロング清算が2億9,813万ドルと大半)、影響を受けたトレーダーは11万2,341人に達した。ETH単独の清算額が3,222万ドルとBTCの2,766万ドルを上回った点も、ETHの下げ幅がBTCより大きかった一因になっている。ショート清算は1億288万ドルにとどまり、清算全体の約73%がロング側に偏った点からも、発表前のポジションが「据え置き=安心」に傾いていたことがうかがえる。
ファンダメンタルをどう見るか
今回のタカ派反対は一過性の連想売りというより、FRB内の政策スタンスの分裂を映した実質的な変化と見るべきだろう。声明は雇用が労働力の伸びに見合って堅調に推移し、生産性・設備投資も強いとしており、利上げ再開を主張する理事が3人に増えたのは景気の底堅さを背景にしている。年末時点の金利見通しは3.6〜4.1%とレンジ表示にとどまり、市場はこの分裂が9月会合でどちらに転ぶかを見極める展開に入る。一方、AIセクターの逆行高は、NEAR IntentsのAI駆動取引量が7月時点で累計220億ドルを突破するなど、マクロの金利観測とは独立したプロトコル固有の活動指標が支えており、こちらも一時的な物色では説明しきれない実需の側面がある。
資金はどこへ動いているか
BTCドミナンスは58%前後で高止まりしており、CMCのアルトコインシーズン指数も46/100と「ビットコインシーズン」領域にとどまる。全面的なアルトシーズンには程遠いが、AIセクター単体では資金流入が観測された。BTC現物ETFは週間ベースで2,740万ドルの小幅純流入となったものの、直前には4営業日連続で計5億2,600万ドルの流出を記録しており、フローの方向感は定まっていない。ETFという「大口の入口」がまだ様子見姿勢である中、AIセクターへの資金はより小回りの利く個別トークンへの短期資金が中心とみられる。ETH現物ETFについては直近で複数銘柄の新規上場が進んでおり、BTCとは資金の出入りが必ずしも同じ方向に動かなくなっている点も、今回BTCとETHの下げ幅に差が出た背景として無視できない。
過去の類似局面との比較
直近では7月28日にもAIメモリー株(Micron・SK Hynix等)の急落局面で暗号資産のAI銘柄(NEAR+5.8%・FET+4.7%・TAO+2.7%)が逆行高となったばかりで、今回のFOMC後もNEAR+2.9%・TAO+2.3%と再び底堅さを見せている。過去1週間で2度、マクロ・株式側の悪材料に対しAIセクターが逆行する場面が確認できたことは、この銘柄群が短期的にはBTC・ETHとの連動性を弱めつつある兆候として注目に値する。ただし過去の類似局面では、初動で買われた後に数日で反落するケースも多く、今回も持続性の検証が必要だ。
注目銘柄と価格水準
個別ではICP(2.06ドル、+3.3%)、NEAR(1.61ドル、+2.9%)、VIRTUAL(0.5584ドル、+2.4%)、TAO(190.60ドル、+2.3%)が値動きの上位に並んだ。TAOは8月に見込まれるETF関連審査への思惑が観測される水準として意識されており、200ドル台回復が目先の節目になりうる。LINK(8.29ドル、+1.7%)はDeFi・トークン化証券分野での採用実績が引き続き下支え材料とされる。国内主要取引所ではNEAR・RENDER・LINK等の取扱いがある一方、TAOやVIRTUALは銘柄によって未上場の場合があるため、購入前の確認が必要だ。RENDER(1.39ドル、+1.8%)は週間では6%超安から下げ止まりの動きを見せており、GPUコンピュート需要という別軸のテーマ性が意識されている。FET(0.1380ドル、+1.6%)は5月末の水準からは依然として大きく値を戻せておらず、セクター内でも銘柄ごとの温度差が大きいことには注意したい。
想定されるシナリオとリスク
上振れシナリオとしては、9月FOMCに向けてタカ派反対が3人からさらに増えず、雇用・インフレ指標が落ち着けば、据え置き継続への安心感からBTC・ETHが週間安値圏から戻す展開が考えられる。この場合AIセクターの個別物色も続きやすい。下振れシナリオとしては、次回会合までの経済指標でインフレの高止まりが確認され、タカ派反対がさらに広がれば、利上げ観測の再燃でBTCが直近安値の6万3,000ドル台を割り込むリスクがある。AIセクターについても、マクロ全体の売りが強まれば個別材料による逆行高が長続きしない可能性があり、いずれのシナリオも次回雇用統計・FRB高官発言の内容次第という条件付きで見る必要がある。
まとめ
FOMCは据え置きを維持したが、3人のタカ派反対という投票内訳がBTC・ETHの下落と4.1億ドルの清算を招いた。一方でAIセクターは+1.2%と逆行高となり、NEAR・ICP・TAOなど個別銘柄への物色が続いている。BTCドミナンス58%が示す通り資金の主流はまだBTCに向いており、AIセクターへの資金流入が一過性か持続的かは今後数日の値動きで判断材料が増える。編集部はClaude Codeによる自動売買を実運用しており、検証結果は運用実績ページとニュースレターで公開している。
